日本が世界に誇る大スター(時事通信フォト)

日本が世界に誇る大スター(時事通信フォト)

「大谷は無味無臭」

 大谷があまりに品行方正で優等生であることに違和感を抱く人がいる。ライターで野球ファンの小政りょう氏は、こう言う。

「私たちに聞こえてくるエピソードがあまりにも“人々が求める大谷翔平像”に沿っていて、真面目な好青年すぎて情報操作されているんじゃないかという恐怖さえ感じる。これまでのスター選手と違ってスキャンダルとか隙がないんですよね。それで『ホームラン打った』『投げて勝った』という報道ばかり毎日見せられると、飽きる人はいると思います」

 北海道在住のタクシー運転手の60代男性は、往年の選手との違いについて言及する。

「江夏(豊)は見た目あんなコワモテなのに、マウンドに立つとえげつない球を投げて、ファンを沸かせた。昔は試合の後、朝まで飲んで、二日酔いでホームラン打つなんて選手の武勇伝もあったんだよ。大谷が野球選手として正しくて、桁違いにすごいのは間違いないと思うんだけど。野球が楽しいものになっているかは微妙なところだと思っちゃうよ」

 決して大谷自身が悪いわけではなく、あまりに礼賛一辺倒なメディアのあり方に問題があるのかもしれない。野球に関心がないという26歳の会社員女性はこう話す。

「野球って毎日やってるから、毎朝大谷のニュースをやるじゃないですか。『第1打席は』とか変わり映えのない映像を出されて、出演者みんなが口を揃えて『大谷はすごい、すごい』と繰り返す。こんなことって野球以外でありますか? 野球がうまいことって、みんなが褒めなきゃいけないものなんですかね。嫌なら見るなってことなんでしょうけど、テレビ点けたら大谷がいるから、嫌でも目に入ってしまうんです」

 メディアの大谷の扱い方については、野球ファンの中にも不満を持つ人がいる。大阪在住の60代男性が語る。

「僕はもう50年も阪神ファンで、大谷が阪神におったらめちゃくちゃ応援してたんやけどなあ。こっち(関西)のテレビですら、朝のニュースは毎日大谷やから。ホームランならまだしも、三振とか内野安打とか見せられるなら、阪神が優勝しそうやねんから、テル(佐藤輝明)のタイムリーを流してやれよ(笑)。大谷ってオモロイこと言うわけでもないしな。オモロさなら岡田(彰布・監督)の勝ちやで」

 辛口評論で知られるプロ野球解説者の江本孟紀氏(76)に日本の大谷報道について聞くと、こう話した。

「たしかに朝から晩まで大谷ですからね。大谷だけいればいいんですよ。千賀(滉大)や鈴木誠也の活躍など関係なく、大谷さえいればいい。メディアもそれを反映しているんじゃないですかね。

 大谷がいいとか悪いではなく、大谷しか見ていないんですからね。他をやっても見ないんですから。もうちょっと他のプロ野球選手が大谷に刺激を受けて頑張れよと言いたいですね。本人が打たなくてもチームが勝てなくても『大谷、大谷』でいいのかと、他の選手に言いたいね」

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