被害内容にかかわらず一律が公平か
「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の平本淳也代表と石丸志門副代表(時事通信フォト)
では裁判を経ない場合、具体的な賠償額はどのように決められるのだろうか。
「例えば、受けた被害ごとの賠償額をどうするのかという問題があります。報告書では様々な具体的被害が認定されていましたが、口腔性交や肛門性交の場合と、一緒に入浴、同衾、身体愛撫などでは法律上は被害のレベルが違いますし、被害者の年齢や被害に遭った期間の長さ、回数等も様々でしょう 。本来であれば、その被害実態に合わせた賠償を行なうことになります。
しかし現実的には、誰がどういう被害を、何度受けたかの認定は非常に困難でしょう。昔のことなので、本人の記憶が曖昧な部分もあるでしょうし、 そもそも回数が多いほうが賠償額が多くなるという考え方が果たして公平なのか、という議論も出てくるでしょう。また、賠償額にランクをつけると、被害者同士が疑心暗鬼になったり、被害者へのバッシングにもつながりかねない。その過程で被害者が傷つくことがあれば、本末転倒です。
そういうことも踏まえると、『被害内容にかかわらず金額は一律』という判断もあり得るかもしれません。その場合、高めの賠償額で一律にしないと公平性が失われるでしょう」
被害対象者をどのように認定していくのか、ということも議論の対象になるだろう。
「現時点の被害者は、調査に応じた23人ということでしょう。今後、賠償を行なうにあたって、より多くの被害者が申し出てくるかもしれません。被害の認定をめぐっては、被害者が自己申告する必要はあるでしょうし、自己申告を受け付けた後、何らかの形でヒアリングを行ない、被害内容を審査することも必要になるでしょう。また、その期間をどうするのか、何年で区切るのか、それともずっと受け付けるのかどうか。
こうした性被害の場合、過去の事実に蓋をしている人も多くいるのです。今はこの件を思い出したくないから、被害申告はしない、と。が、しばらく時間が経って、被害と向き合うことができるようになって、申告しようと思うかもしれません。私は、この被害者認定は期限を設けるではなく、10年後、20年後でも受け付けるようにすべきだと思っています。性被害の本人のダメージは大きいですから」
賠償総額はどのくらいになるのか。一部では「100億円」という憶測も出ている。
