スポーツ

蛯名正義元騎手が振り返る、厩舎の2階に住んでいた新人ジョッキー時代 1980年代後半の思い出

蛯名正義氏が新人騎手時代の思い出を振り返る

蛯名正義氏が新人騎手時代の思い出を振り返る

 1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、新人騎手時代の思い出についてお届けする。

 * * *
 僕がジョッキーになった1987(昭和62)年というのは、「日本中央競馬会」をJRA、それまで「場外」などと言われていた街中の馬券売り場を「WINS」と呼ぶようになった年です。オヤジたちのギャンブルだった競馬が、もっと幅広い人々が楽しめるレジャーへと向かい始めた時期です。ちなみに「ターフビジョン」なんていうのも、この年に命名されたそうです。翌年にはタマモクロスとオグリキャップの芦毛対決が話題になり、一気に競馬ブームが加速します。

 それでも競馬場はまだ「鉄火場」などといわれ、圧倒的に男性の数が多く、若い女性の姿などはほとんど見かけませんでした。今のように「クリーンキャンペーン」などという言葉もなく、ハズレ馬券が地面に散らかっているような、どちらかというと殺伐とした場所でした。

 それは厩舎のあるトレーニング・センター(トレセン)でも同じ。競馬学校に入る前はテレビでレースを見ることしかなかったので、厩舎での研修が始まってびっくり。とにかく“個性的”な人ばかり。具体的には……ご想像にお任せします(笑)。それでもこの中でなんとかやっていくうちに大人になっていくのだろうなあと思っていました。“教育的指導”なんかもあったようですが、僕がお世話になった矢野進厩舎は、やさしい人ばかりでした(ホントです)。

 新人の頃は厩舎の2階に住んでいました。8畳ぐらいの部屋が2つあって、もう一人、先生の一番弟子だった助手さんと一緒でした。トレセン内には独身寮もあって、そこに住んでいる若手ジョッキーも多かったけれど、僕は厩舎に住んでいた方が朝ラクだなという思いでした。すぐ下が職場なわけですから。時折、馬が壁を蹴る音や鳴き声が聞こえてくることもあり。それはそれで悪くない環境でもありました。

 美浦トレセン自体は東京ドーム48個分という敷地の中に、2つの馬場や坂路(現在改修中)、プールや森林馬道といった調教施設の他、約100の厩舎がありますが、そこに隣接して団地のような建物があり、独身者用から家族が住めるような広さの部屋もあります。食堂やスーパーマーケット、クリニックや郵便局なんかもあって、普通に暮らすために必要なものは揃っています。

関連キーワード

関連記事

トピックス

プロハンドボールリーグ・リーグH(エイチ)で「アースフレンズBM東京」の選手兼監督を務める宮崎大輔(時事通信フォト)
《交際女性とのトラブル騒動から5年》ハンドボール元日本の宮崎大輔が「極秘再婚の意外なお相手」試合会場に同伴でチームをサポートする献身姿
NEWSポストセブン
芸能界から引退を表明した中居正広
《中居正広引退騒動を過熱させたSNS社会》タレントたちの「中居さんはいい人」主張も誹謗中傷の材料に 加害者にならないためにどうすべきか
NEWSポストセブン
2月5日、小島瑠璃子(31)が自身のインスタグラムを更新し、夫の死を伝えた(時事通信フォト)
小島瑠璃子(31)夫の訃報前に“母子2人きり帰省”の目撃談「ここ最近は赤ちゃんを連れて一人で…」「以前は夫婦揃って頻繁に帰省していた」
NEWSポストセブン
ファンから心配の声が相次ぐジャスティン・ビーバー(Xより)
《ジャスティン・ビーバー(30)衝撃の激変》「まるで40代」「彼からのSOSでは」“地獄の性的パーティー”で逮捕の大物プロデューサーが引き金か
NEWSポストセブン
2月4日、小島瑠璃子の夫で実業家の小島功太さんが自宅マンションの一室で亡くなった。
《実業家の夫が緊急搬送され死亡》小島瑠璃子、周囲に「芸能の仕事はしていない。いまは会社員として働いている」と説明していた 育児・夫・自分の仕事…抱えていた悩み
女性セブン
都内で映画の撮影に臨んでいた女優の天海祐希
天海祐希主演『緊急取調室』が10月クールに連ドラで復活 猿之助事件で公開延期になった映画版『THE FINAL』も再始動、水面下で再製作が進行
女性セブン
本誌インタビューでも叔父・朝青龍への本音を語っていた
横綱昇進・豊昇龍の素顔 親方は「素直でいい子ですよ。暴力とかは全くないからね」、叔父・朝青龍と距離を置く時期もあった
週刊ポスト
400勝投手の金田さん(左)も、吉田さん(右)には苦手意識があったという
追悼・吉田義男さん 400勝投手・金田正一さんも「あのチビだけは手こずった」「バットを持ってしゃがむから、ストライクになりゃせん」と苦手意識を嬉しそうに語っていた
NEWSポストセブン
事故発生から1週間が経過した現在も救出活動が続いている(写真/共同通信社)
【八潮・道路陥没事故】74才トラック運転手の素顔は“孫家族と暮らす寡黙な仕事人”「2人のひ孫の手を引いてしょっちゅう散歩していました」幸せな大家族の無念
女性セブン
亀梨和也
亀梨和也がKAT-TUNを脱退へ 中丸と上田でグループ継続するか話し合い中、田中みな実との電撃婚の可能性も 
女性セブン
水原問題について語った井川氏
ギャンブルで106億円“溶かした”大王製紙前会長・井川意高が分析する水原一平被告(40)が囚われた“ひりひり感”「手をつけちゃいけないカネで賭けてからがスタート」【量刑言い渡し前の提言】
NEWSポストセブン
ボブスタイルにイメチェンされた佳子さま(時事通信フォト)
「ボブスタイルに大胆イメチェン」「ご両親との距離感」に垣間見える佳子さま(30)の“ストレスフリーな一人暮らし生活”
週刊ポスト