今回の中継では、日本テレビで田中圭さん、テレビ朝日で広瀬すずさんの経験者が出演し、ともに専門的な知識を披露したばかり。さらに『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)での熱量たっぷりの解説が称賛を集めた満島真之介さんも「バスケの顔」となる可能性を秘めています。ただ3人とも進行という点では不安が残るだけにしばらくは共存していくのではないでしょうか。
ちなみに長年多くの世界大会がテレビ中継されてきたバレーボールは、これといった「顔」のタレントがいません。さらに先月、『世界陸上2023 ブタペスト』(TBS系)が放送された陸上は織田裕二さんが25年にわたって「顔」を務めてきましたが、前回で卒業したため、何度も「ロス」の声が飛び交っていました。コアなファンから時に否定的な声も挙がるものの、いないと寂しさを感じさせられるのも「顔」であることの証でしょう。
誰もが知っている国民的な人気者こそ少なくなったものの、タレントの全体数が増えた今、それぞれのスポーツ経験者は必ずいて、さらに全国大会出場などの実績を残した人も少なくありません。各局が視聴率を獲得することだけでなく、「競技人口を増やす」「アスリートの待遇や環境を上げる」などの目的もあるため、今後も「顔」となりうるタレントの試行錯誤は続いていくでしょう。
ここまで世界大会や日本代表の試合を対象に書いてきましたが、「どのスポーツも通常のリーグ戦は民放地上波で放送されず、DAZNやABEMAなどのネットで主にコアなファン層向けに配信されている」という厳しい現実があります。さらに民放地上波では、さまざまなスポーツを集めた“スポーツ総合番組”ですら土日の深夜帯のみ。日ごろライト層が目にふれる機会が少ないからこそ、各スポーツの世界大会や日本代表の試合における「顔のタレント」の重要性は高いのです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。