奇獣・重工業Tとのアクションシーンの撮影の様子
タローマンのスーツアクターはパントマイマー
でたらめな動きをするタローマンのスーツアクターはパントマイムを得意とする俳優の岡村渉が起用されている。
「まず、いわゆるスーツアクターを本職でされている方は、タローマンとは合わないなと思ったんです。どんな人を探せばいいんだろうと思ったときに最初に思い浮かべたのがコンテンポラリーダンサーの方。それで、パントマイムの方も含めて探したときに岡村さんがいたんです。体形的にも理想的だったのでお願いしました。
最初はお互い探り探りだったんで、手の動きから『くねくねしてください』みたいに具体的に説明して。途中からはイメージを掴んでくださって岡村さんから動きを提案してくれたりしました」
藤井は岡村に「見たことのない動き」を要求したというが、その動きと「1970年代特撮っぽさ」は矛盾する。そのバランスはどのように考えたのだろうか。
「そういう意味もあって、人気がでなくて消えていったということかもしれませんね(笑)。動きが早くてキビキビしたヒーローらしい動きではなくヌメヌメした動きで差別化をしたい。暗黒舞踏のようなイメージがありました。ヒーローではないちょっと気味の悪さみたいなものを出したいと思って。泥臭くて奇妙な感じですね」
「タローマン」は正義のヒーローではなく、あくまで「巨人」
タローマンは、一貫して劇中で「ヒーロー」と形容せずに「巨人」と称されている。だから、正義のために戦っているわけではない。最終回でも地球ごと破壊してしまう衝撃的なラストを迎えた。
「岡本太郎のマインドで『世界を救う』みたいなものはしっくりこなかったんです。やっぱり岡本太郎の思想原理で行動するよくわからない巨人にしたかった。最後も何かしらのカタルシスがほしかったんですけど、悪いやつをやっつけてちゃんちゃんだとタローマンらしくない。地球を壊すくらいのことはしたいなと思って逆算して物語を考えていきました」
劇中の登場人物の台詞は、当時の特撮作品の多くがそうであったようにアテレコで行われた。しかし、特異なのは、高津博士と風来坊以外は、演じた本人とは違う人物が声を吹き替えたことだ。昭和感のある風貌と当時感のあるしゃべりを両立できる役者がなかなかいなかったことからのアイデアであったが、それが独特の雰囲気を生む結果となった。
「撮影は関西でやったので、東京ほど役者がたくさんいるわけじゃありません。その中から吹き替え前提の“顔採用”でひたすら昭和顔の人を探しました。関西でやっている強みもあって、東京の役者さんだとどうしても再現ドラマとかで見たことがある人になりがちですけど、関西だと演者さんの顔が割れてないから、フェイク映像としての精度は高まる。あと洗練されていないパンチのある人が出てくる率が高いというのもありますね(笑)。
声のほうは、声優さんやナレーター専門の方もいますし、マザえもんさんという昭和っぽい声を自分で作ってネットにあげている方がいたので、声をかけてお願いしました。棒読みとは違う昭和っぽい平坦な読み方って難しくて、どうしてもニュアンスが出てしまうんですよね。だから結構苦労しました」