書籍『タローマンなんだこれは入門』は1970年代に小学館で発刊された「入門百科」シリーズをオマージュした
『TAROMAN』は、円谷プロダクションの『帰ってきたウルトラマン』や東映の『仮面ライダー』、円谷プロから枝分かれした日本現代企画の『シルバー仮面』、ピー・プロダクションの『スペクトルマン』など各社の特撮ヒーローが乱立した頃に制作されたという設定だ。『TAROMAN』は、実相寺昭雄も撮った『ウルトラセブン』っぽいと視聴者から言われたり、ピープロ作品っぽいなどとも言われ、SNS上でその元ネタ探しも盛んにおこなわれた。
「具体的にひとつの作品をイメージするというのはなかったです。(つくる際に)『ウルトラマン』っぽくしようと言ったら、みんな『ウルトラマン』を目指して『ウルトラマン』に寄せすぎたものになってしまう。だから、具体的にこれとは言わずに、片っ端から当時の特撮作品を見て、その世界観を自分の体に染み込ませて作っていきました」
1970年代を意識しすぎて納品した映像はあまりにも粗すぎてNHKが絶句……
NHKのプロデューサー・倉森京子は、設定を守りつつも、「現代のテレビ視聴に耐える画質のクオリティをどうするのかについて丁寧に議論した」と『タローマン・クロニクル』の中で証言している。
「最初に提出したやつが、本当に当時のビデオテープを復刻したという設定に寄り添って、3倍速でダビングを重ねたような画質だったんです。それには(NHK側も)絶句していて(笑)。さすがにこれは流せないと言われたので、もう少しマシな画質に戻していって、ここならどうですか、ここならどうですかってギリギリ許容範囲なところを調整していきました」
昨年末放送された大森時生によるフェイクドキュメンタリー『このテープ持ってないですか?』(BSテレ東)でも当時のビデオが発掘されたようなノイズ感のある画質が効果的に使われていたが、その魅力はどのような部分にあるのだろうか。
「やっぱり異物感がありますよね。見ている人にとって、違和感も与えられるし、懐かしさというか、親しみも与えられる。なんかその両方があるのがいいですよね」