故・坂本九さんの妻、柏木由紀子さん
歌手としてはもちろん、映画や舞台の俳優、テレビ番組の司会としても多方面で活躍し、人望が厚かった坂本さんだけに多くの仕事仲間が柏木と子供たちの行く末を気にかけた。
「テレビ黎明期から一緒に仕事をしていて特に主人と親しかった黒柳徹子さん(90才)とは何度も夜中に電話をかけ合って一緒に泣きましたし、娘の宝塚の初舞台を見に来てくれたこともありました。徹子さんとは数年前まで一緒に初詣に行くのが恒例でした」
ある年の大晦日、黒柳から「明日からハワイに行く」と聞いた柏木は、「私も行っちゃおうかな」と思い立った。
「主人は家族で移住を考えたこともあるほどハワイが大のお気に入りだったので、黒柳さんの言葉を聞いて、思い切って飛行機に乗ってひとりでハワイに行きました。現地では黒柳さんと偶然お会いして盛り上がりましたよ」
当時のことを黒柳はエッセイ『小さいときから考えてきたこと』にこう綴っている。
《やっぱり、九ちゃんが上から見ていて、まるでマリオネットでもやるように、柏木さんと私を近づけてるんじゃないの? 柏木さんが寂しくないように。そうじゃなかったら、絶対、私たちが逢うはずは、ないもの》
「主人を亡くした直後、周囲からは『時が解決するよ』と言われて、“私の気持ちがわかるはずがない”とすごく腹が立ちました。だけど結果的に子供の存在と多くの人の優しさに助けられて歩き出すことができた。38年の間、うれしいことも少なからずあったことは確かです。そういう積み重ねが自分を支えたのかな」
【プロフィール】
柏木由紀子(かしわぎ・ゆきこ)/1947年東京都出身。1964年に、映画『明日の夢があふれている』で女優デビュー。1971年に坂本九さんと結婚。長女は女優の大島花子で、次女は女優の舞坂ゆき子。3人の共演ステージも多数。
※女性セブン2023年11月2日号