「HIFU治療は患者を治療台にあおむけに寝かせ、内側に251個の超音波照射口が付いた円錐形の装置を圧迫するように腹部に置きます。超音波が1点に集中するよう照射すると、焦点付近の温度は60~80℃になり、通常の細胞は55℃で壊死するので、照射部位を少しずつずらしながら、がん全体に照射します。エコーで見ながら照射を行なうため、正常な細胞への障害を最小限にとどめることが可能です」(祖父尼教授)
治療台では0.15秒照射、0.15秒中止を繰り返す。時間は30分から1時間程度、麻酔なしでも痛みや熱さはほとんど感じない。ポイントは放射線の被曝がなく、複数回繰り返しの照射も可能ということ。
これまでの切除不能な局所進行膵がんにおける治療成績は良好だ。その実績を踏まえ、さらなる有効性を証明するために現在、日本のソニア・セラピューティクス社の最新HIFU機器を使用しての切除不能膵がんの多施設共同治験が開始されている。
取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2023年11月10日号