目にいいとされるアントシアニンも、効果を示す科学的根拠はほとんどない。女性に多い貧血も、サプリで対処しようとする人も少なくないが、鉄分サプリなどではなく、病院を頼るべきだ。銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘さんが言う。
「貧血なら鉄分サプリなどはのまずに病院に行くべきです。サプリよりも安い値段で、効果のある薬を処方してもらえます」(長澤さん)
近年、のむと長時間体内にとどまることをうたった「タイムリリース型」や、分子が小さくより高濃度で吸収されるという「リポソーム型」と呼ばれるサプリがSNSなどで若い世代を中心に注目を集めているが、これらも効果のほどは定かではない。
「SNSや動画サイトの健康情報は多くが科学的根拠に欠ける“個人の体験談”です。場合によっては、体験談に見せかけた広告のことも少なくありません。どうしてもサプリなどの健康食品を摂りたい場合は、管理栄養士などの専門家に相談するか、厚労省などの公的なホームページで情報収集してほしい」(北條さん)
そもそも、SNSやCMなどで目にする著名人や個人の体験談は、多くが「プラセボ(思い込み)」によるものだと、左巻さんは斬って捨てる。
「一時期“よく眠れてストレスが軽減した”といった著名人の体験談から乳酸菌飲料が爆発的にヒットしましたが、商品自体の効果ははっきりとは証明されておらず、快眠効果は強いプラセボによるものだと考えられます」(左巻さん・以下同)
効果がないならまだしも、サプリによって健康を害するケースすらある。
「米国では、高い抗酸化作用のあるβカロテンによって肺がんを防げるのではないかという仮説のもと、喫煙者(肺がんリスクのある人)を2つのグループに分けて、それぞれに偽薬とβカロテンのサプリを与える大規模な実験が行われました。すると、なんとβカロテンをのんだグループの方が、明らかに肺がんになる人や死者が多くなったのです。そのため、実験は途中で中止になりました。
サプリは特定の栄養素のみを簡単に大量摂取できる点にも危険がある。水溶性のビタミンCは摂りすぎても尿として排出されるだけですが、中には大量に摂ると代謝しきれずに体にたまってしまうものもある。サプリを分解するのは肝臓なので、のみすぎれば肝臓を酷使することになり、肝機能障害につながる可能性もゼロではありません」