大関・貴景勝(時事通信フォト)

大関・貴景勝(時事通信フォト)

伊勢ヶ濱部屋との因縁

 とはいえ、一人横綱の照ノ富士はひざのケガを抱え、巡業での土俵入りというかたちで興行に貢献こそするものの、本場所は休場ばかりだ。稀勢の里の例からもよくわかるが、相撲協会が営業面を考えて、“興行の目玉”となる横綱を作りたがる傾向が強いのはたしかだろう。2015~2017年に横綱審議委員会委員長を務めた守屋秀繁氏(千葉大学名誉教授)はこう懸念する。

「相撲協会はお客さんが集められる状況を望みます。今場所の貴景勝の勝ち星がいくつであっても、優勝、あるいは準優勝して昇進の内規を満たしたかたちになるなら、横綱にするつもりだと思います。照ノ富士がいつまで綱を締めていられるのかがわからないですからね。横綱の土俵入りがなくなると、本場所や巡業に支障が出る。その懸念が解消できるなら、勝ち星がいくつでも構わないと考えるんじゃないですか。

 私は横審時代、ある執行部の親方に『こんなに大関や横綱を作ってどうするんだ?』と問うたことがあります。その親方は『横綱や大関がいないとお客さんが来てくれないんです』と言っていましたね」

 しかし、そうした“綱の安売り”は貴景勝のためにもならないはずだ。守屋氏が続ける。

「先場所の貴景勝の優勝決定戦での注文相撲を見ると、元横審としては、あんな相撲では横綱になる資格がないと言いたいですね。『横綱相撲』という言葉もあるくらいですが、あの相撲は幕内下位の力士が取る相撲でしょう。仮に貴景勝が今場所で優勝しても、昇進についていろんな意見が出ると思います。そういった声を抑え込むぐらいの圧倒的な成績と内容で優勝してもらいたいですね」

 とにかく、相撲内容の充実が伴った全勝優勝を目指すほかに道はないのだろう。その道のりは険しいものとなるはずだ。

 稀勢の里の昇進前後と同様に、番付上位には照ノ富士以外にも霧島、豊昇龍の両大関という手強い曲者のモンゴル勢が揃っている。そして、それ以上に厳しいのが「因縁の関係にある伊勢ヶ濱部屋勢との取組だろう」と相撲ジャーナリストは言う。

「もともと貴景勝の師匠だった貴乃花親方は、弟子の貴ノ岩が伊勢ヶ濱部屋の日馬富士から暴力を受けたことを大々的に問題化して廃業に追い込みました。あの事件の因縁があるうえに、先場所の優勝決定戦の注文相撲で敗れた熱海富士も伊勢ヶ濱部屋。

 幕内には照ノ富士、翠富士、熱海富士、宝富士、錦富士ら相撲巧者が揃っており、中盤以降は番付に関係なく好調な力士を上位陣と当てていく最近の取組編成の傾向からすれば、貴景勝は伊勢ヶ濱部屋勢との対戦が続く可能性だってある。全力で潰しにくる相手に対して、勝ちっぱなしを続けるのは容易ではない」

 そうした難関を突破して、貴景勝は文句なしの全勝優勝と横綱昇進を勝ち取れるのか。期待と懸念が交錯するなか、本場所は11月12日に初日を迎える。

※週刊ポスト2023年11月17・24日号

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