“映え”を意識した葬儀写真を投稿(イメージ)
葬儀でも”映え”を意識
葬儀やご遺体の写真をSNSなどで公開し炎上するパターンは、ユーザーのリテラシーが高まったことなどにより、最近ではかなり減ってきた。しかし、それは対象が人間だった場合に限られるのかもしれない。千葉県内で動物病院を開設する獣医師・野村和彦さん(仮名・50代)が憤る。
「亡くなったペットの写真や動画を撮ってネットに上げる飼い主さんはたくさんいます。もちろん違和感は覚えていましたが、悲しみの中にいる飼い主さんの気持ちを思うと、何も言えなかった。ただ、最近はエスカレートとしている気がしてならない」(野村さん)
そう言って野村さんが見せてくれたのは、ペットの遺体の写真を公開するユーザーの投稿だ。亡骸の写真や動画を撮影するだけでなく、中には、遺体の回りに色とりどりの花を配置して、まさに「映え」を意識しているような投稿もある。
「写真や動画がきれいに見えるよう加工したり、悲しげな音楽をつけたりと演出しています。ご遺体を撮影するだけでもどうかと思うのに”映え”まで考えている。周囲から見ると、この人は本当にペットがなくなって悲しんでいるのか、わからなくなってしまいますよ」(野村さん)
とはいえ、そうした投稿に寄せられるコメントのほとんどは、似たような考えのペット愛好家達らしい。どれも飼い主をねぎらうもので、非難したり、よくないと指摘する声はほとんどない。同じような考え方のユーザーからしか直接的な反応がないからだろう、その投稿が全世界から閲覧できるもので、黙って眉をしかめている多くの人たちがいるとは想像もつかないのだろう。
「国民総カメラマン」状態になり、いつでもどこでも誰でも撮影するようになった。写真を撮ることに対するハードルが下がったためか、思いもよらぬ場面で写す人が増えている。そのためか、以前ならカメラを向けるには躊躇するような対象や場所でも、スマホを掲げて撮る人が少なくない。だが、遺体さえも「映え」の対象にしているかのような様子は、異様というしかない。