松野博一官房長官は岸田文雄首相の声や画像を使った偽動画が拡散していることについて「政府の情報を偽って発信することは、場合によっては民主主義の基盤を傷つけることにもなりかねず、行われるべきではない」と述べた(時事通信フォト)

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偽広告提供元も有名企業を詐称

「フェイク広告」と呼ばれるものは以前から存在した。ただしそれらは、単に著名人の写真を勝手に無断使用したものに過ぎなかったが、いま、増加しているのが「ディープフェイク」技術を用いた動画を添付したSNS投稿だ。さらに最近目立つのが、広告の提供元までが、他者を名乗る偽アカウントになっている事例だ。知名度があったり社会的信用度が高い人物や番組を真似るだけでなく、提供元も詐称することで閲覧した人が疑いを持ちづらくさせるのだ。

 たった今、SNSで調べてみても、楽天創業者の三木谷浩史氏、実業家の前澤友作氏や堀江貴文氏、株主優待を有効活用する投資家としてバラエティ番組にも度々出演する桐谷広人氏らと思わせる写真や映像を使ったフェイク広告が次々に流れてくる。よく見ると、本人が承諾して出演しているとは思えない不自然さがあるものの、そうした広告を流すアカウントが「楽天証券」や「SBI証券」など、実在する証券会社や銀行などと称しているため、ひょっとして本物かもしれないと惑わせる。

 これらの広告と称する投稿をクリックすると様々なサイトへ誘導されるのだが、なかには日本経済新聞や朝日新聞などのホームページを模したフェイクサイトに誘導されるパターンもあった。新聞社サイトを模しているので新聞記事のような体裁のものが掲載されているのだが、そのほとんどは、「投資」を促す内容となっている。一体誰が、なんのためにフェイク広告を作り続けているのか。

 改めて、これらの広告投稿に添付されている画像や動画、リンク先のフェイクサイトを確かめると、そのほとんどに中国などで使われる「繁体字」が使われていた。また、書かれている文章は確かに日本語なのだが、日本人が見れば一発で違和感を覚えるような不自然な言葉遣いだ。さらに、これらの投稿やフェイクサイトがどのユーザーによって作成・投稿されたかを確認したところ、中国の片田舎の商店だったり、東南アジアの通販サイトなどが表示される。東南アジアの通販サイトの担当者は、筆者の取材に対し「そのような広告は出した覚えがなく、アカウント自体が勝手に名前を使って開設されている」と驚いた様子で話すのみだ。

 これ以上の追跡は難しいのかと思われたが、かつて、日本国内で偽物を売り捌くグループに在籍した経験がある、在日中国人実業家の趙氏(仮名・30代)が次のように証言をする。

「偽広告の作成に中国系の人物が関与しているのは間違いない。何しろ、そうした広告を投稿するSNSアカウントを作るアルバイトを、日本国内にいる中国人留学生向けのWeChat(微信)グループで募集したことがあるからです。バイト希望者は、自分が詐欺に加担するとは知らずに応募してくる。でも実際には日本の有名人の写真を勝手に使い、お金儲けを匂わせて日本人を騙す広告をつくるバイトです。そうしたアルバイトで実際に給料がもらえるかと言えば、そうでない場合も多く、皆が騙し騙されながらやっているといる実態があります。偽広告を出しているのが本当は誰かまではわかりませんが、反社会的な勢力であることは間違いない。中国の若者は、政府発表よりもずっと貧しく、仕事もない。悪いことだとわかっていて、こういう仕事をする人が増えているのかもしれない」(趙氏)

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