2021年放送『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』が話題になった
全6回と銘打たれた特番では、第3回を最後に“打ち切り”に
そして今年5月から地上波で放送されたのが『SIX HACK』だ。全6回放送とアナウンスされていたが、まさに“放送事故”があったかのように第3回を最後に放送が突如“打ち切り”となった。一時は『SIX HACK』の過去回も配信から取り下げられた。
一連の流れを受けてSNS上では、放送と配信の中止ですらも大森による新しい演出であるのではないかと、さかんに推察が交わされることになった。
そんな『SIX HACK』は偉くなるためのハックを紹介する、いわゆる“意識高い系”のビジネス番組を模している。
「『偉くなる』というテーマが最初に思い浮かびました。『偉くなるための方法』を伝える番組を考えたときに、ビジネス番組というフォーマットにたどり着きました。そして、大きなテーマとして陰謀論を取り上げたいと考えました。
陰謀論というのは“自分だけが知っているハック(裏技的な工夫や思想)”として考えることもできます。そのハック(陰謀論)だけで一点突破をして、うまく世界をサバイブできるという価値観は、ビジネス番組が提示する『これを押さえれば成功できる』みたいな感覚と近いのではないでしょうか」
番組内では現代社会で「偉くなる」ためのハックが多数登場する。<相手の発言を、個人の意見にすぎないと断定し、会議で優位に立つ>というハック「Only You(オンリー・ユー)」、<質問側の意図をあえて曲解することで、論点をずらし回答をはぐらかす>というハック「Rice Logic(ライス・ロジック)」、<謝罪の意思を示しつつ、具体的なことを何も言わず今後の対応を有耶無耶にする>というハック「Nagata Phrase(ナガタフレーズ)」といった皮肉めいた技名とともに使用例もあわせて紹介する。それらは誰でも簡単に使えるようなレベルでまとめられているからこそ、ある種の危うさも感じてしまう。
「真に受けたとしても大丈夫なように作ったつもりですね。もちろん強調して描いている部分もありますが、偉くなるために本当にみなさんがやっていることなんじゃないかと思います。
たとえば、何かの案を通すときに、こっちの上司に最初に話を入れておくみたいなことと似たようなことだと思います。紹介したハックは皮肉の効いたネーミングだと言われるんですけど、それは皮肉というより本当のこと。それが恐ろしいことだと思います」
テレビ畑ではないクリエイターが制作に参加
スタッフにはテレビ畑ではないクリエイターを起用している。「構成」にはクリエイターのダ・ヴィンチ・恐山が参加し、さらにSF作家の樋口恭介も「構成協力」として加わりながら番組内にコメンテーターとして出演した。
「ダ・ヴィンチ・恐山さんは『このテープ』を見て、SNSですごく面白いと言ってくださったことがきっかけで知り合いました。元々、恐山さんの作るものが好きで、世の中で起きている事象を検証、解体して、もう一度構築することが得意な方という印象があったんです。
加えて恐山さんは陰謀論にも造詣が深い方だったので、この企画を考えたときに、恐山さんと一緒にやるとうまくいくんじゃないかと思ったんです。
樋口さんは、そういったことを喋れる方がいないと『SIX HACK』が成立しないという中で、『世界SF作家会議』(フジテレビ)という番組で異常なほど喋っていたのを見て、『この人しかいない』と思いお声掛けしました。元々、樋口さんの書いたSF思考の本も読んでいました。
普通の考え方では正解にたどり着けない問題をSF的思考で物事を考えることによって、突破するアイデアや解決策が見つかるという思考法が、「偉くなることが必要だ」という価値観と組み合わせると、ちょっと不気味なことが起こりそうだなと」
司会役を務めたのはユースケ・サンタマリアだ。
「実はユースケさんも『このテープ』を見てくださって面白かったということでご出演いただいたんです。
フェイクドキュメンタリーに合う人って、失礼な言い方かもしれないですけど、目がビー玉みたいな人だと思っていて。
たとえば、バラエティに出演して、盛り上がったり楽しそうにコメントしたりしていても、その人の内部に本当にその人がいるのかわからない人が合うと思うんです。山田孝之さんとか有田哲平さんとかいとうせいこうさんとかもそうですよね。ユースケさんはそのビー玉界の頂点みたいな方。だから完璧に演じてくださいました」