てれびのスキマ氏からの問いに軽快に答えていく大森時生氏
インターネット上でカルト的人気のクリエイターにエンディング映像を依頼
番組では終盤に「脳のブレーキを外す練習」として、画面に表示されるカウントダウンに合わせてテレビのボリュームを上げるように指示される。「終了の合図まで無音だから安心してください」というアナウンスもされる。不安が残るものの、カウントダウンに合わせて指示通りに実際にボリュームを上げても、急に音を出して驚かせることはないまま、このコーナーは終了する。
「これは恐山さんのアイデアで、ただ見てもらうだけではなく手を動かして参加してもらう感覚を感じてもらいたかったんです。これまで僕の番組はBSで放送されることが多かったのですが、今回は地上波でBSと比べると約10倍以上の人がリアルタイムで見ていることになる。
心理学には、相手からの小さな約束を果たすことで、その相手への信頼感が上がる現象があるそうです。このコーナーを通じて、自分も参加してしまった、その番組に寄与してしまったという雰囲気を生み出せたらなと」
そして番組のエンディングには、「MADドラえもん」などで話題を呼ぶ映像クリエイターのFranz K Endoが手がけた不気味な映像が流れる。無作為に集められた映像や画像をコラージュしてつくられたトリップ感あふれる映像は、放送1回目は1分程度、2回目は約5分、3回目には10分以上と回を追うごとに長くなっていく。
「最後まで見た方はわかると思いますが、“ある思想”を広めなくてはいけないと危機感を持ったプロデューサーが番組を作っていたという設定だったので、その思想を伝える内容がすっと頭に入ってくるためにはあの映像が必要でした。Franz K Endoさんにしか作れない雰囲気が面白いなと思いますし、インターネットを介した画面ではなく、テレビで見るからこそのドキドキ感もありましたね」
「陰謀論を面白がることに危うさを感じる」
3回目で地上波での放送が“打ち切り”になると、後日YouTubeで「なぜ極めて偏った思想の番組が放送されてしまったのか」「なぜ誰も止めることができなかったのか」の2点について、インタビューと再現ドラマを通じて説明する『検証』と題された動画が公開された。この動画では、仮名でこそあるが大森自身が主人公になっている。
「僕が主人公になりたかったっていうより、僕以外でやると、それはちょっと倫理的にどうなんだって思ったところがありました。主人公は現実と虚構の区別がつかなくなってしまった人で、その人が原因でこういうことが起きてしまったという話なので、自分以外の人にするのは、その人になんか変なリスクを負わせることになってしまいますから」
主人公は陰謀論におかされていく。普段信じるわけがないと思っていても、その壁の脆さの恐ろしさが描かれている。
「陰謀論におかされる怖さももちろんですが、僕は陰謀論を笑うこと、面白がることに危うさを強く感じるんです。マルチ商法でもよく使われるテクニックですが、あえて面白い雰囲気やツッコミどころを残しておくことで、相手にツッコませることは、相手をその文脈に乗せていくということと地続きになっていると思います。
TikTokで一時期バズっていた「大大大大大出世!」のコールを、みんなが面白がって真似した動画を数多くあげていましたが、それはまさにその思想に乗っかってしまうということ。笑うことが思想の内部に近づいてしまう怖さがあると思うんです。
ネタにする人自体は内部に取り込まれるまではいかないかもしれないけど、それを見た他の人を内部に引っ張る要因になったりする。『SIX HACK』もギャグ的な要素を笑って、面白がってツッコんでいたりすると、内部に取り込まれてしまうというのをプロデューサーは狙っている、という構造なんです」
