9月の軍事パレードでも父の傍らに座った(朝鮮通信=時事)
「新星女将軍」の呼称は誤報の可能性も
「このRFAの記事を書いた記者は、今年2月10日にも『北朝鮮でジュエという名前の女性が警察に呼ばれて改名を迫られている』という記事を書いていますが、私たちアジアプレスでは、北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンプクド)、両江道(リャンガンド)、平安北道(ピョンアンプクド)に住む取材パートナー6人に継続して確認をとってきました。しかし今日まで全員が『改名せよという話はまったく聞かない』と答えている。今回の新星女将軍にしても、もし本当なら極めて重要な情報で、漏れ出してくるのが普通ですが、6人ともまったく聞いたことがないと言っています。
また、RFAの記事では、この講演会は、労働党の組織指導部が偵察衛星発射を祝って、秘密警察の国家保衛局や安全局(警察)などの幹部を呼んで開いたと書かれていますが、北朝鮮の組織の構造上、党機関の組織指導部が行政機関の幹部らに講演するというのは、なかなか考えにくい」(同前)
この情報は真偽不明で、現時点で判断の材料にすべきではないという。
ジュエと呼ばれる女児については、まだ謎に包まれているのが現実だ。石丸氏が言う。
「金正恩氏の娘であることは間違いないが、実は名前も年齢も公にされていません。幹部も一般の住民も、写真や映像で姿は知っていても、名前も年齢も知らない。『ジュエ』という名前は、韓国の情報当局がつかんだ情報とされていて、また、元バスケットボール選手の米国人デニス・ロッドマンが2013年に訪朝したときに、まだ赤ちゃんだった娘を紹介され、名前は『ジュエ』と聞いたという証言があります。外部世界ではそう呼んでいるけれど北朝鮮国内ではまったく知らされていない。10歳というのも推定の年齢です」(以下、コメントは石丸氏)
最高指導者の娘として北朝鮮メディアに露出しているのに、名前も公表しないというのが、北朝鮮の秘密主義である。
それでも後継者の「筆頭候補」である理由
正恩氏の子供については、その人数でさえはっきりしていない。これまで息子が1人と娘2人がいるといわれていたが、娘が表舞台に出てきたことで、息子の存在にも疑いがかけられている。
「ジュエ以外は北朝鮮メディアに一切出ていない。息子がいるというのは韓国の情報当局からの情報で、以前は存在すると自信満々だったのが、最近はトーンダウンしています。本当にいるのか、私にもまったくわかりません。
我々の取材パートナーにジュエが後継者になる可能性についてどう思うかを聞くと、当初は6人全員が 『まだ子供なのに』『女が指導者なんてありえない』と否定的でした。儒教の影響、男尊女卑の考えがまだ色濃い社会ですから、住民たちがそう考えるのも無理はない。しかし、登場から1年が過ぎ重要行事での露出が増えるにつれ、『もしかしたらあの女児を4代目に据えようとしているのかもしれない』と感じ始めています」