馳浩・石川県知事(時事通信フォト)
折しも河村氏の証言が出る直前、自民党最大派閥の「清和政策研究会」(安倍派)が政治資金パーティーの収入の一部を政治家に環流させ裏金化していた疑惑が報じられた。こうした「政治とカネ」の闇が機密費についてもあったのではないか。
第2次安倍政権が、発足から7年間で計上した官房機密費は約86億円。年間10億円を超える“使途不明の金”だ。安倍派の派閥のための政治資金として“裏金”にされたのではないかと疑われても仕方がないだろう。
五輪招致と官房機密費、そして政治資金の裏金疑惑と政界の金を巡る問題に改めて関心が高まっている。そして機密費に関する前号の記事は、これまでその受け渡しに関与した関係者たちに大きな波紋を呼んだようだ。
私のところにも、かつての首相官邸や現在の自民党内事情に通じている様々な政界関係者から情報や意見が寄せられている。こうした人々の話からは「政治とカネ」の現実がより一層、浮かび上がってきた。それぞれ匿名を条件に話を聞いた。
一気に噴き出してきた
官邸周辺に関わる関係者のひとりに聞くと、報道に対して批判的な感情を見せた。
「官房長官経験者が軽々に話すことではない。これまでの不文律に触れることだし、自民党がこの状況にあるなか、火に油を注ぐようなことをするのはいかがなものか」
その一方で、馳氏の発言から一連の流れで、よく声をあげたという関係者もいた。
「ここまでよく踏み込んだなと驚いた。河村さんの記事が出る前日に平野さん(鳩山政権の官房長官、74)の発言が別の週刊誌のネットニュースで報じられていたけど、彼は民主党だ。それよりはるかに中身があったし、自民党の元官房長官が口を開いたことで、肝を冷やした人もいたのではないか。記事が出た後で、朝日新聞がすぐ翌日に追いかけてきたよね」
記事の内容を評価する声が与党内でも相次いだ。興味深かったのが、内情に詳しい人物によるこんな見方だ。
「発言内容を注意深く見ると、機密費の仕組みや使い途について長官経験者ならではの経験を色々と語っている一方で、一番肝心のところはぼかしたり伏せたりしているね。河村さんは決意を持って語られたのでしょうが、なかなかうまく話したなという感じがする」