国内

《田中角栄没後30年》前例至上主義の官僚を使いこなした最強の“聞く力” 元秘書が語る「聞かぬは一生の恥」の言葉

田中角栄氏の元秘書・朝賀昭氏(写真/共同通信社)

田中角栄氏の元秘書・朝賀昭氏(写真/共同通信社)

 没後30年となった今太閣・田中角栄。毀誉褒貶はあれど、その決断力・実行力は今も多くの人の心に残っている。もしこの時代に「角さん」がいれば、現代の苦境をどう乗り越えただろうか。田中の元秘書で、23年にわたり支え続けた朝賀昭氏が当時について語った。

 * * *
 よく言われる「脱官僚」、「政治主導」ですが、実は簡単にはいきません。前例や既得権を崩すには、相当なエネルギーが必要ですが、オヤジ(田中角栄)は労を厭わなかった。

 官僚は基本的に賢く、相当な勉強もしています。当然、オヤジの範疇外の議論もある。ただ、オヤジは重要な政策立案では、まず自分の考え、イメージを披露し、官僚の意見を拾う、そこからディスカッションするスタイルでした。そうした話し合いの繰り返しで、政策を詰めていった。

〈角栄は総理を目前にした通産大臣時代も、官僚と議論を戦わせるために、朝2時に起きて資料を読み込み、秘書官が私邸に迎えに行く頃には新聞全紙を読み終えて陳情をこなしていたという〉

 オヤジの「聞く力」は最強でしたね。的外れな質問をしても叱られることはなく、「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥だ」と言って下さった。だから官僚たちも自分の意見をはっきり進言できる。専門分野の知識は当然、官僚のほうが上でしょうが、官僚が口憚って言えない知識をどんどん引き出している感じでした。

 官僚だけでなく、実務を担当する役人への気遣いもありました。役所の次官、課長同席で話を詰める場合、基本的には序列順に話を聞きますが、オヤジは「現場を知る課長のほうが話が早い」と課長を優先することもあった。従来の慣習より合理的な実務をする政治家でしたね。

〈政治家は、官僚をどう使いこなすかで政策実行能力が決まる。角栄は各省の官僚の顔と名前、入省年次、家族構成まで暗唱できた〉

関連キーワード

関連記事

トピックス

女優・遠野なぎこ(45)の自宅マンションで身元不明の遺体が見つかってから2週間が経とうとしている(Instagram/ブログより)
《遠野なぎこ宅で遺体発見》“特殊清掃のリアル”を専門家が明かす 自宅はエアコンがついておらず、昼間は40℃近くに…「熱中症で死亡した場合は大変です」
NEWSポストセブン
俳優やMCなど幅広い活躍をみせる松下奈緒
《相葉雅紀がトイレに入っていたら“ゴンゴンゴン”…》松下奈緒、共演者たちが明かした意外な素顔 MC、俳優として幅広い活躍ぶり、174cmの高身長も“強み”に
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン