国内

田原総一朗氏が振り返る田中角栄の胆力「米国依存からの脱却にはあの信念とタフさが不可欠だ」

田原総一朗氏は現代の為政者に求められるのは“タフさ”だと語る(時事通信フォト)

田原総一朗氏は現代の為政者に求められるのは“タフさ”だと語る(時事通信フォト)

 没後30年となった今太閣・田中角栄。毀誉褒貶はあれど、国民の記憶にいまも残り続ける「角さん」の姿は、現代の為政者にこそ求められるものかもしれない。『日本の政治 田中角栄・角栄以後』(講談社刊)の著書があるジャーナリストの田原総一朗氏が「角栄論」を語った。

 * * *
 岸田首相が防衛費倍増を決めたのは、明らかに米国の要請によるものだと私は見ている。安全保障を米国に委ねる日本にとって「拒絶」の選択肢はなかったはずだ。

 世界各地で起こる紛争介入は、もはや米国だけでは手に負えない。だからこそ、日本にも負担を求めてきた。ならば、日本もものを言えばいい。いま再び、長年の対米従属から脱し、独自外交に舵を切る好機が訪れているのだ。

 振り返れば、歴代日本総理のなかで、米国依存からの脱却に本気で取り組んだのは田中角栄しかいない。当時は米ソ冷戦の真っ只中で、第4次中東戦争がオイルショックを招いた。まさに、ロシアのウクライナ侵攻を巡る米露対立の激化、イスラエルのガザ攻撃で中東が不安定化している現在の国際情勢と非常に似ていた。

 あの時、角さんが展開した資源外交は、これからの日本外交が取り得る一つの針路を示唆していると考えている。

〈角栄は「無資源国」の日本が石油輸入のほとんどを欧米の石油メジャーに依存していることに強い懸念を抱いていた。通産大臣時代にはサウジなどで油田の自主開発に力を入れ、首相に就任すると、米国メジャー依存を脱するため全方位の資源外交に乗り出し、1973年9月にフランス、英国、西ドイツ、ソ連を訪問し首脳外交を展開した〉

 角さんはフランスと油田の共同開発、英国では北海油田への開発参加、西ドイツとも「日独資源問題合同委員会」の設置など具体的な事業計画を次々に決めていった。とくにフランスとは、石油だけではなく、ニジェールでのウラン鉱共同開発や、米国に全面依存していた濃縮ウランの加工委託まで表明した。まさにエネルギー面で米国からの自立を図ろうとした。

 ちょうどこの欧州歴訪中に第4次中東戦争が勃発。エネルギーの輸入先の多角化を図ろうとする角さんの先見の明を示したが、これが「田中は反米だ」と米国を怒らせることになった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン