東京地検特捜部は12月19日、二階派への強制捜査に踏み切った(時事通信フォト)
会計責任者は「政界の事情に明るい人ではなかった」
その事実関係を握るキーマンとなる安倍派の会計責任者はNTT出身で子会社の役員や監査役を務めた人物だった。同じNTT出身の世耕弘成・自民党前参院幹事長の紹介で、4年ほど前に事務局長として迎えられていたことが明らかになっている。
では、もう一人のキーマン、二階派の会計責任者はどんな人物なのか。ある二階派関係者はこう言う。
「(会計責任者の)A氏は、約20年前、現在の志帥会ができて間もないころに議員秘書の紹介で事務局に迎えられた人物です」
志帥会は、「参議院の法皇」と恐れられた村上正邦氏を会長とする政策科学研究所(旧中曽根派)と、三塚派(現・安倍派)から離脱した亀井静香氏のグループが合併して1999年に結成された。その後、江藤隆美氏を会長、亀井氏を代表代行として江藤・亀井派と呼ばれたが、A氏はそれと前後した時期に着任したという証言だ。ちなみに、二階俊博・元幹事長が会長となったのは、その約10年も後になる2012年になってのことだった。
「A氏は苦労してきた人だと聞いています。『派閥の事務局に来る前は運転手や生花店勤務などさまざまな仕事を経験したんだ』と話していたのを聞いたことがある。政界の事情に明るいわけではなく、政治資金パーティーの会場取りや当日の段取りなんかは秘書経験のある別のスタッフに任せ、そこでまとまってきたものを会長や事務総長に決裁を取るのがA氏の役割でした」(前出・二階派関係者)
ちなみに、安倍・二階の両派では、不記載のありようが微妙に異なる。安倍派ではノルマ超過分の収入だけでなく議員側への支出も不記載なのに対し、二階派では議員側への支出は派閥の収支報告書に載せ、議員側の報告書にも記載していた。
ノルマ超過分に着目すれば、その支出だけが載って収入が不記載なら収支報告書に掲載されている数字が「赤字」になりそうだが、前出の二階派関係者が「何年か前の記憶」と断わったうえで、こう読み解く。
「パー券のノルマというのは議員の事務所にとっては負担で、ノルマ以上に売ってくれるのはごく一部の幹部だけ。安倍派のように何人もいなかったと思います。単年度で還流させる“赤字”は、おそらく数千万円ですが、2億?3億円という計上している分のパーティー収益や繰越金といった“黒字”で相殺することで飲み込めたのではないか」