1992年11月11日、南アルプスの仙丈ヶ岳の山頂で結婚式を挙げたときの記念写真
2023年の5月下旬に再入院。カテーテルが外されたので胃ろうをしてほしいと訴えたが、体力的に難しい状態だった。
「退院日には、『シャーベットが食べたい』と言うので、ゼリーを凍らせたものを食べさせると、『おいしい』と言って丸ごと1個食べ切りました。飲み込む力は衰えていましたが、望むものを食べ、ベニシアの笑顔が見られてうれしかった」
だが退院の翌日に発熱し、誤嚥性肺炎も起こしてしまう。梶山さんが「ぼくが悪かった。やってしまった」とパニックを起こすと、訪問診療医が、「自分を責めなくていい。本人が食べたくて、喜んで食べたんだから、それでいい」と慰めてくれたという。
「退院から13日目の朝、日照時間が最も長い夏至の日に、隣に寝ていたぼくが気づかないうちに、眠ったまま、大好きな家から旅立ちました。
部屋には彼女の笑顔の写真を飾っているので、いまもベニシアの愛に包まれ、一緒に暮らしている気がします。毎日夢にも出てきますしね」
梶山正さん
【プロフィール】
梶山正さん/写真家。山岳や自然に関する記事を雑誌や書籍に発表。妻・ベニシアさんとの最後の7年間をつづった『ベニシアの「おいしい」が聴きたくて』(山と渓谷社)を2024年2月に発売予定。
取材・文/山下和恵
※女性セブン2024年1月4・11日号