JR中央線の高架化に伴って役目を終えた旧国立駅舎は、観光案内所などとして活用されている(2020年4月撮影:小川裕夫)

JR中央線の高架化に伴って役目を終えた旧国立駅舎は、観光案内所などとして活用されている(2020年4月撮影:小川裕夫)

東日本大震災の復興にもカナダ材

 現在もブリティッシュコロンビア州のほか、アルバータ州などカナダの各地から多くの木材が日本へと輸出されている。建物にカナダの木材が使われていても、普段は気にすることはないだろう。まさにカナダ材は縁の下の力持ちという役割を演じているわけだが、そのカナダ材が力を発揮したのが、2012年の東日本大震災の復興だった。

 東日本大震災の復興では、関東大震災と同様に日本の木材だけで家屋の再建を賄うことは難しかった。そのため、カナダ材があちこちで用いられることになるが、宮城県名取市の物産館「メイプル館」や福島県いわき市の障害児者支援センター「エリコ」といった大型公共施設にもカナダ材が使われている。

 関東大震災と東日本大震災、どちらも日本の災害時に手を差し伸べてくれるカナダは心強い友好国といえる。その後もカナダ木材は日本に輸入されて各所で使われてきた。

 先述した国立駅にもカナダ材は使われたが、ほかにも鉄道関連でカナダ材がふんだんに使われている。それが2013年には東急電鉄東横線の渋谷駅―代官山駅間が地下化された際に誕生したログロード代官山だ。

 ログロード代官山は全長220メートルの線路用地を遊歩道と商業施設へと転換したもので、商業施設にも木材が多く使用され、線路用地という無機質な空間を緑と木が溢れる空間へと変えた。ログロード代官山の木々や緑はカフェで休憩する人や遊歩道を散策する地域住民たちに癒しを与えている。

 関東大震災から、日本とカナダは100年にわたって友好関係を深めてきた。多くの日本人にとって、カナダはそこまで身近な国とは言えないかもしれない。カナダと聞いて、ナイアガラの滝やメープルシロップ、赤毛のアンを思い浮かべるぐらいだろうか。

 昨今、木造技術が向上し、東急池上線の戸越銀座駅や小田急電鉄の参宮橋駅など、駅舎にも木を使う傾向が強まっている。国産材を奨励する向きもあるが、今後もカナダに頼る場面はあるだろう。カナダは木材を通じて日本の住生活や鉄道を支える、実は凄い国でもある。

東急東横線の渋谷駅―代官山駅間の地下化に伴って生まれたログロード代官山(撮影:小川裕夫)

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