芸能

小林旭が語る権力者にへつらわない生き方「権力や忖度がはびこる芸能村を一層腐らせるのはコンプライアンスだ」

20代から数々の作品で主演を張った小林旭

芸能村を一層腐らせているのがコンプライアンス文化だと指摘する小林旭

『仁義なき戦い』や『渡り鳥』シリーズで知られる銀幕スター・小林旭(85)は、昭和の映画界・芸能界を生き抜いたレジェンド俳優だ。かつての芸能界のあり方と、大きく変わってしまった今の芸能界について何を思うのか──小林が過去を振り返りながら語る。【全4回の第2回。第1回から読む

 * * *
 大騒ぎになったジャニー喜多川の性加害だって、芸能界じゃ何十年も昔から知られた話だ。

 俺の家に昔、ジャニーとメリー(喜多川)が来たことがある。当時、駆け出しだったジャニーズ事務所が売れっ子の俺をマネジメントしたいという話で、ジャニーから「旭さん、私のところに体を預けてくれませんか」と言われたんだ。

 でも彼と少し話をして、“これは俺の世界じゃないな”と思った。考え方が肌に合わなくて、それ以上マネジメントの話は進展しなかった。

 ジャニーズにせよ他の大手プロダクションにせよ、タレントをテレビ局に売り込んでスターにする豪腕は大したものだった。でもな、俺は、小林旭という男は、芸能界の権力者にへつらうことはしなかった。大手事務所の連中に「バカ野郎が」と言い続けてきた。

 その結果、嫌な目にもあった。特に昭和61年の「第28回日本レコード大賞」は忘れられない。審査を終えた後、審査員の西村晃が俺のところに来て言うんだ。「おめでとう! 『熱き心に』が大賞に決まったよ!」ってな。フタを開けたら大賞は中森明菜の『DESIRE─情熱─』だった。芸能界の汚い部分を見せつけられた気がして、レコ大だけでなく、授賞式を放送するTBSにも複雑な想いを抱いたよ。

 こういう権力や忖度がはびこる芸能村を一層腐らせているのがコンプライアンス文化だ。最近のテレビは視聴者からクレームが出ないことばかりに苦心して、喫煙シーンもカットされるんだろ。

 本来、人間には清濁併せ呑む「ゆとり」が必要なんだ。丸太の桶だって「たわみ」があるから砕けも外れもしないのに、今の時代にはゆとりがなさすぎる。

 セクハラやパワハラも昔はザラにあった。俺も大部屋役者時代は衣装をドブ川に捨てられたり、アクションの撮影中に本気で殴られたりと嫌がらせばかりされた。無論、そうした映画界の悪しき風習は一掃すべきだけど、厳しい現場だから学べることが多いのも事実。今は現場がぬるま湯で礼儀や礼節を教える人がいなくなったから、無作法な人間が目立つ。

 かつて俺がNHKの歌番組に出た時、司会の宇崎竜童がサングラスをしていたから、「司会はちゃんとゲストの目を見て喋れるようにしろ」と本番前に外させたことがある。それ以降、宇崎は俺の教えをしっかり守っていたけど、こんな事も今じゃパワハラと言われてしまうのかね。

(第3回に続く。第1回から読む

※週刊ポスト2024年1月12・19日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン