小川:現会長の原田稔氏は極めて優秀な官僚タイプで、池田氏の威光を用いながら組織をまとめることに長けていますが、池田氏より後の会長は実務が得意な人ばかりで、宗教的な指導は十分でないと聞きますから、特別な影響力を持つトップが生まれようがないのでしょう。しかも原田氏はすでに82歳。彼の後に創価学会を仕切る手腕を持つ人が見当たらないことも不安材料です。
島田:組織の人材不足が目立ちますが、私が気にしているのが、池田氏の家族葬に創価学会の女性部長の姿があったことです。もともと創価学会の中で選挙活動に最も熱心なのは婦人部の女性とされ、彼女らは池田氏のファンクラブの様相を呈していました。今は婦人部と女子部が合体して女性部となりましたが、その部長がなぜ家族葬に参列したのか興味深い。この部長自身、自分が呼ばれるとは思っていなかったようで、池田氏の妻・香峯子さんの望みだったとの説もあります。
小川:一般に宗教団体において布教や勧誘を担う女性信者は大切な存在です。この女性部長がこの先、組織の中で何らかの重要な役割を果たすかもしれませんね。
(後編に続く)
【プロフィール】
島田裕巳(しまだ・ひろみ)/1953年、東京都生まれ。1976年に東京大学文学部宗教学科を卒業し、1984年に同大学大学院人文科学研究課博士課程を修了。放送教育開発センター助教授などを歴任。現在は東京女子大学非常勤講師を務める。
小川寛大(おがわ・かんだい)/1979年、熊本県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。宗教業界紙『中外日報』記者を経て、2014年に宗教専門誌『宗教問題』編集委員、2015年に同誌編集長に就任。
※週刊ポスト2024年1月12・19日号