越田亮司医師
ただ近年は、治療の適応自体が見直されてきているという。東北のPCI治療をリードするひとり、星総合病院(福島県郡山市)循環器内科部長の越田亮司医師が話す。
「実は、PCI治療はいま“反省期”に入っています。血管が狭いからといってすぐに拡げようとするのではなく、その適応があるかどうかを慎重に見極めるべきと言われるようになってきているのです。
もちろん冠動脈の根本かそこに近い部位が90%以上詰まっている場合や、薬物治療がなされていても患者さんが苦しい思いをしているのであれば速やかな治療を考えます。しかし症状が安定している患者においては、冠動脈の末梢の枝の1本が狭くなっているからといって、すぐにステントを入れることはありません。
それよりも高血圧や脂質異常症、糖尿病などがある人は薬物治療を行い、詰まりの原因である動脈硬化を進行させない治療を徹底すべきです」
つまり、いかに無駄を省いて、必要充分な治療を施してくれる医師や施設を探せるかどうかが、患者の明暗を分けるといえるだろう。また、病状によっては、手術を受けた方がいいケースもあると越田医師は続ける。
「冠動脈が3本とも詰まっている場合や、重度の弁膜症などを合併している場合はカテーテルだけで治療することが難しいため、信頼できる心臓血管外科医に患者さんを紹介して、手術をお願いしています。
反対に、心臓血管外科の先生から、全身麻酔が難しい患者さんや、手術の負担に耐えられない高齢の患者さんが、PCIで治療できないかと紹介されることがあります。そうした場合、治療が単純ではないケースのやりとりが自然と多くなります。このように心臓血管外科医と循環器内科医は患者さんの治療方針を密に検討する良好な関係であることが望ましく、両者の関係がうまくいっている施設はいい病院だと言えるでしょう」