と、ここまでは、あくまで「想像」の話だが、事実が確認できる範囲で問題なのは、澤田康広日大副学長である。澤田副学長は立ち入り検査で大麻とみられる植物片の入った缶を独断で十二日間も保管していた、それは本人も認めている。これは証拠隠滅という立派な犯罪ではないのか? 素人ならこういうミスがあるかもしれないが、澤田氏は元検事で検察庁の幹部でもあった。間違うはずが無いではないか。
また、この日大アメリカンフットボール部薬物事件をめぐり麻薬取締法違反(所持)に問われて逮捕され、現在公判中の日大3年北畠成文被告は、二〇二三年十二月一日の初公判における被告人質問に対し、次のように述べている。
〈7月6日に沢田康広副学長らが立ち会いの下、寮で部員らの荷物検査を実施。北畠被告は大麻や合成麻薬などの入った缶を任意提出し、沢田氏が持っていったと説明。その際、中村敏英監督が「副学長に先に見つかってよかった」と発言したことで、「もみ消してもらえると思い、安心した」と振り返った。「それくらい力がある人だと思った」とし、沢田氏が検事だったことも知っていたという。〉
(『スポーツ報知』2023年12月2日付)
言うまでも無いことだが、裁判における発言は証拠として採用される。つまり、後で撤回できるようなマスコミのインタビューにおける発言とは違って、きわめて真実性の高い重い発言だ。つまり、「澤田元検事」は日大アメフト部の「犯罪もみ消し係」だった可能性も否定できない。だったら、検察庁は捜査に乗り出すべきだろう。少なくとも「澤田元検事」に事情聴取すべきなのだが、現時点で私はそういう話は聞いていない。いったいどういうことか?
「身内だから見逃す」のか。それで検察庁は「正義」とか「公正」とか口にできるのだろうか。検察庁に忠告しておけば、こういうことをきちんと捜査しないと、世間はさまざまな組織に「天下り」している「元検事」は「犯罪もみ消し係」として雇われているのだ、と認識するようになるだろう。
だから、日大が依頼した第三者委員会の薬物問題に対する調査結果は、「責任の所在について、アメフト部の調査を主導した沢田康広副学長が『最も重い』と指摘。酒井健夫学長は『重い』、林理事長は『決して軽くはない』」(讀賣新聞オンライン2023/11/30 21:22)とした。
しかし、日本のワイドショーなどはいまだに「林理事長と澤田副学長の泥仕合」という形で「面白おかしく」報道している。さらに、当の澤田副学長が「辞任を強要された等のパワハラ」を受けたと、林理事長を相手に一千万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴したことも「どっちもどっち」のような感覚で報道している。「どっちもどっち」では無い。澤田副学長のやったことは、本来ならば辞任どころか罷免に相当する、と私は考える。
私が理事長の立場なら、「あなたは副学長でありながら大学の名誉を著しく傷つけた。すぐに辞めてください」と言うだろう。当然の話だ。
しかし、私の知る限り日本のマスコミでそのような報道をしているところは一つも無い。何をか言わんやである。