企業説明会に参加する大学生ら(イメージ、時事通信フォト)

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若手はネット対応の新部署と兼業だが、上司はそれぞれ別

 内定競争率が百倍は当たり前、職種によってはさらにもう一桁高い倍率になることもある人気企業に、大手民放テレビ局がある。かつてほど業界の景気がよくないとはいえ、入社後30歳までに給与が1000万円の大台を超えることも少なくない。誰もが羨む会社員生活のはずが、それでも会社に見切りをつける新人が後を絶たない。

「学生時代からずっと報道の仕事にあこがれ、念願叶ってテレビ局の報道に配属されたまではよかった。でも、この数年でテレビ局を取り巻く環境がガラっと変わった。あまりに金を稼ぐことに重点が置かれるようになり、やりがいが消えました」

 こう言ってうなだれるのは、都内の民放キー局を昨年退職した幸田深雪さん(仮名・30代)。有名私大を卒業後、海外の大学でジャーナリズムを学び、世界各地の紛争地域を訪れるなど、報道の仕事に対する熱意は高かった。だが、この数年のテレビ局を取り巻く環境の変化、そして社員に求められる要求が激変したことに絶望し、テレビ局を辞めたのだ。

「入社直後は、まだ報道の仕事にやりがいを感じていました。先輩記者は、金を稼ぐのは営業の仕事で、私たちは世のために人のためになる取材をして情報発信をするのが使命なのだと教えてくれ、私もその通りだと信じていました」(幸田さん)

 だが、インターネットと、それを利用するスマートフォンやタブレットなどの普及に伴うコンテンツの多様化、視聴者のテレビ離れや広告収入の低下などが顕在化し始めると、社会の動きを広く伝える社会的義務が報道にはある、と意識する余裕がなくなってきた。ジャーナリズムよりも、「どれだけ稼げるか」に重きが置かれるようになり、会社が社員や記者に求める要求が様変わりした。

「今では、すべてのテレビ局がニュースをネットへも出すようになりました。それと同時に、内容ではなく、より多く視聴されるもの、PV数が報道であっても重視されるようになってしまいました。地上派で放送する仕事に加え、ネット配信対応も記者が行わなければならず、仕事量も倍になった」(幸田さん)

 ネット配信対応という名目で、相次いで新たな部署が新設され、そこの管理職には中堅以上の社員が就いた。だが彼らはネット配信の重要性を会議で力説はするものの、肝心の実務の方は心許ないため、年齢だけを見て「ネットにも強いはずだ」と会社は若手に「兼業」を強いるようになった。

「兼業を命じられた若手は、元から所属していた部署に籍を置きつつ、ネット配信業務も担当させられましたが、上司たちは兼業しません。なので、純粋に上司の数や業務量が増えただけ」(幸田さん)

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