2023年12月、ENEOSホールディングス(HD)の斉藤猛社長解任に関し、記者会見で謝罪する社外取締役の西岡清一郎氏(中央)ら。懇親の場で女性に抱きつくという不適切な行為があったことが理由(時事通信フォト)

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「一言で言えば、強引で意固地。社内的な人間関係などの問題も多々、起こすが、それでも最終的には大きく見える形になる仕事をするから、上司たちからの覚えもめでたい。でも、部下からは上ばかり見て下を見ない”ヒラメ”だと陰口を叩かれていました」

 都内の大手物流会社で係長を務める本田芳樹さん(仮名・40代)は、入社以来何年もの間、10歳ほど年上のやり手部長から怒鳴られたり公衆の面前で罵詈雑言を浴びせられたりした。しかし部長は、難しいプロジェクトをまとめたり、大きな案件をこなすリーダー役として社内で知られており、幹部からも一目置かれる存在だったという。そんな状態が長く続いて、社内では横暴部長の存在は「当たり前」「仕方ないこと」として誰もが捉えていた。しかし、5年ほど前、本田さんや会社の仲間たちの意識が一気に変わる出来事があった。

「当時、部長の配下にいた新入社員や若手社員が、部長の日常的なパワハラを理由に出社拒否すると言い出したんです。でも、幹部など上の人たちは”今までの若手は耐えてきたんだ”とか”若手の我慢強さが足りない”と判断し、どうせ部下はやめないと考えていた。ところが、3人の部下が、あっけなく辞めました。部長の首もともこれで涼しくなるかと思いきや、パワハラは相変わらず」(本田さん)

 幹部たちは、3人もの若手社員が去ったのに「有能な部長に辞められたら困る」「大きな仕事を誰がやるのか」と部長の配置転換などに難色を示した。ところが、間も無く別の部下たちからも退職や部署異動の願いが続々寄せられたことで、部長はついに失脚。閑職へと追いやられたが、それでもまだ幹部の一部は「部長の穴を埋められるわけがない」と言い続けていた。ところが結局、部長のパワハラが消えたおかげで、様々な業務がスムーズにすすむようになり、若手は上司にビクビクしなくなった分、明るく仕事に励むようになれたのだ。

「あの人にしかできない、という仕事は確かにあるかもしれません。ただ、そこで考えるのを辞めてしまってはダメなんです。目先の利益にとらわれて将来の展望を持たないのと同じで、パワハラがあることでの損失が計り知れないことも認識すべきです。今では、部長にしかできないとされてきた仕事は若手がすんなりこなしていて、結局部長はパワハラを使って仕事を独占しようとしていただけじゃないのかとすら思っています」(本田さん)

 声が大きい人が、実力以上に力があるように振る舞い、成果も大きいように見せるのはよくあることだ。変化を嫌う組織では、その大きな声に惑わされ、彼らにいいようにされているのかもしれない。

長い目で見れば結局、生産性を悪くする

「仕事はできるが横暴な人」が生き残るのは、その上司たちの意向が根強いことは前に紹介した通りである。そして、パワハラやセクハラが横行する会社は若手の定着率も低く、結果的に会社は成長しない。一見、ものすごく当たり前のことではあるが、パワハラ・セクハラ社員を大切に抱えている会社幹部たちは、目先の利益や儲けのために「致し方ない」と見て見ぬふりをする。たとえそれが犯罪であっても、である。

「専務のセクハラは、社内ではセクハラとは捉えられていないほど、日常的でした。私自身、お尻を触られたり、肩を抱かれたりしたことがあり最初は驚いていました。ですが、専務は仕事ができるし、気に入られないと出世に響くと我慢しているうちに、結果的にわたしたちも専務のセクハラを許していた。そう指摘されて、初めて我に返りました」

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