芸能

「冬は刑事ドラマの季節」は過去の話か 今季は“0.5作”まで減った理由

『院内警察』

医療×刑事ドラマの『院内警察』(HPより)

 かつて冬季の連続ドラマには、刑事モノが多かった。しかし今季は医療×刑事ドラマの『院内警察』(フジテレビ系)のみで“0.5作”という状況だ。なぜ「冬の刑事ドラマ」は減ってしまったのか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

 * * *
 2月に入って冬ドラマが序盤から中盤に差し掛かる中、ふと気づかされたのが、この時期の定番だった刑事ドラマの少なさ。下記に、民放ゴールデン・プライム帯で放送されている今冬の新作ドラマを挙げていきましょう。

月曜―『君が心をくれたから』(フジテレビ系、21時)、『春になったら』(カンテレ・フジテレビ系、22時)
火曜―『マルス-ゼロの革命-』(テレビ朝日系、21時)、『Eye Love You』(TBS系、22時)
水曜―『となりのナースエイド』(日本テレビ系、22時)、『婚活1000本ノック』(フジテレビ系、22時)
木曜―『グレイトギフト』(テレビ朝日系、21時)、『大奥』(フジテレビ系、22時)
金曜―『ジャンヌの裁き』(テレビ東京系、20時)、『院内警察』(フジテレビ系、21時)、『不適切にもほどがある!』(TBS系、22時)
土曜―『新空港占拠』(日本テレビ系、22時)
日曜―『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』(TBS系、21時)、『アイのない恋人たち』(ABC・テレビ朝日系、22時)、『厨房のありす』(日本テレビ系、22時30分)

 毎年2クール連続放送され、現在22シリーズ目の『相棒』(テレビ朝日系、水曜21時)は別格として、刑事ドラマの新作は医療×刑事ドラマの『院内警察』のみ。15作中“0.5作”に留まっています。

 では過去の冬ドラマではどれくらい刑事ドラマが放送されていたのでしょうか(刑事事件を解決する物語)。

 昨年の冬ドラマでは、『警視庁アウトサイダー』(テレビ朝日系)、『今野敏サスペンス 機捜235』の13作中2作。2022年の冬ドラマでは、『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)、『駐在刑事』(テレビ東京系)、『DCU~手錠を持ったダイバー~』(TBS系)の11作中3作。

 2021年の冬ドラマでは、『監察医 朝顔』(フジテレビ系、医療×刑事0.5作)、『アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~』(テレビ東京系)、『青のSP―学校内警察・嶋田隆平―』(カンテレ・フジテレビ系、学園×刑事0.5作)、『警視庁強行犯係 樋口顕』(テレビ東京系)、『レッドアイズ 監視捜査班』(日本テレビ系)の12作中4作。

 ちなみに5年前の2020年は、『トレース~科捜研の男~』(フジテレビ系)、『刑事ゼロ』(テレビ朝日系)、『記憶捜査~新宿東署事件ファイル~』(テレビ東京系)、『メゾン・ド・ポリス』(TBS系)の13作中4作。

 10年前の2014年は、『隠蔽捜査』(TBS系)、『福家警部補の挨拶』(カンテレ・フジテレビ系)、『緊急取調室』(テレビ朝日系)、『戦力外捜査官』(日本テレビ系)、『S -最後の警官-』(TBS系)の14作中5作。

 やはりジワジワと減って今年の“0.5作”に至った様子がうかがえます。なぜ冬の刑事ドラマはこのように減っているのでしょうか。

テレビ朝日にも脱・刑事ドラマの動き

 そもそも刑事ドラマが冬の定番だった理由は、「寒さから在宅率が上がり、家でゆっくりテレビを見る時期だから」「事件解決に向けた謎解きを楽しむ視聴者が多いから」「日没の早さや人気(ひとけ)の少なさなどから事件の描写がハマりやすいから」などと言われています。

 その傾向はおおむね変わっていない一方で、明らかに変化が見えるのは作り手たちの意識。近年は各局のプロデューサーから、「家でゆっくりテレビを見てもらうチャンスがあるのなら、見ごたえのある別のジャンルでもいいのではないか」「むしろ2010年代に量産されて飽きられた感のある刑事ドラマより別ジャンルのほうがいいのではないか」という意識が感じられます。

 その意識をさらに加速させたのが2020年春の視聴率調査リニューアル。全国規模で年代別の個人視聴率などが計測されるようになり、民放各局はスポンサー受けのいいコア層(主に13~49歳)に向けたドラマを手がけるようになりました。

上野樹里

『監察医 朝顔』に出演する上野樹里

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン