「ジェノサイダー!」と抗議するイスラエル国民
「戦闘休止」「停戦」について現在、イスラエル国民の世論は揺れている。そのひとつは、ハマスの急襲に憤り「ハマスを殲滅しなければならない」とする声だ。
イギリスのタブロイド紙『デイリーメール』が2月5日に配信した記事では、10月7日のハマスの奇襲の際に人質となり、11月25日に釈放された9歳の娘・エミリーさんを持つ父親・ハンドさんの、ハマスに対する強い怒りの声が報じられている。
エミリーさんは「ナイフを首に突きつけられ、『これでお前を殺してやる』と脅された」「人質になっていた期間、ほとんどの時間を3人の男と一緒にいて、誘拐された時と同じパジャマを着ていた」などと、当時の恐怖を父のハンドさんに明かし始めた。しかし他の詳しいことは、まだ話すことすらできずにいる。ハンドさんは未だ残る人質の解放を願いつつも、「ハマスを殲滅しなければならない。そうでないなら、亡くなった人も、人質も、虐殺も、全て無意味で無駄だ。世界がなんと言おうと、私は気にしない」と、ハマスに対する敵意を露わにする。
他方、戦闘休止を願うイスラエル国民の声もある。まだ人質が帰ってこないことに苛立つイスラエル国民が「ハマス殲滅より人質の命を!」と声を上げ、停戦を求める2000人規模のデモも起きている。
さらには、まるで虫ケラのように殺されていくパレスチナ人に思いを馳せ、攻撃の手を緩めないネタニヤフ首相の家の前にテントを張って「ジェノサイダー!」と連呼し、ガザへの攻撃停止そのものを求める国民もいる。しかしネタニヤフ首相は、強硬姿勢を崩さない。「戦争の目標はハマスの壊滅と人質奪還、そしてガザが2度とイスラエル人の脅威にならないようにすることだ」と表明している。
米メディアの一部では、「人質全員の解放と引き換えに最長2カ月の戦闘休止をハマスに提案した」との報道もあった。
しかし、「人質全員の解放」と、終戦ではなく「一時的戦闘休止」という提案では、到底ハマスがのむわけがない。これは、ネタニヤフ政権が世論に配慮したパフォーマンスに過ぎないと考えた方が良いだろう。
それに加えて1月24日、ガザ中部でハマスの戦闘員がイスラエル軍の戦車にロケット弾を発射し、イスラエルの予備役兵21人らが死亡。ガザ南部では別の攻撃でイスラエル将校3人が死亡し、10月のハマス侵攻以降、最多の犠牲を出した。これで、停戦へのハードルはさらに高まってしまった。