パワーショベル(油圧ショベル、ユンボ)を操縦するには、車両総重量に応じた運転免許と専用の資格が必要(イメージ、時事通信フォト)
「うちで働いていた技能実習生のベトナム人は、確かに薄給で多忙だったかもしれませんが、着実に技能を習得し国に帰って土木事業会社を興して大成功を収めています。正直、帰国せずずっと働いて欲しかったくらいで、今もたまに”帰ってこい”とメッセージを送るのですが、日本は給与が安いし、従業員のモチベーションも低い、と敬遠される」(本多さん)
本多さんが抱いている不安とは、すでに日本人と外国人の立場が逆転しつつある現状についてだ。
「優秀な外国人が帰国し、残ったのは資格も技能も無い、単純労働しかできない日本人だけ。学ぼうという向上心もなく、文句を言うばかりで、いくら人手不足だと言っても、こちらも受け入れたくないくらいです。優秀な外国人を呼んで、日本人を指導してもらう、というような現実が、すぐそこまで来ているんです」(本多さん)
本多さんの言い分は、多くの日本人にとっては「経営者のエゴ」に見えるかもしれない。しかし現実には、3K職場どころか技術職でさえ外国人労働者が担うようになり、文句ばかりを言って働かない日本人たちがただそこに取り残される、ということが起きているのだ。
たとえば、別のある介護現場では、元々技能実習生だった外国人が母国へ帰国後に独立し、今では元いた介護現場に部下を研修に送り込み始めている。見方によっては「日本人の仕事が奪われている」とも取れそうだが、こうした現実に声を上げる人はいないのだ。
なぜ外国人と同等なのかと不満の声をあげる日本人
「仕事があるのにないと言い、人が余っているのに人手不足。それなのに、外国人を優遇するなとか、日本人を無視しているとか言われるわけですから、こちらとしても、そんな人たちとは付き合いきれない。そういう人たちを相手にするのは、座して死を待つようなものです」
筆者の電話取材に、あきらめたような口調で答えてくれたのは、北関東某市を中心に、複数の宿泊型高齢者施設を運営する中山和彦さん(仮名・50代)。介護の現場も3K職場の代表格として語られ、慢性的な人手不足に陥っていた。そのため、技能実習生を含む多くの外国人労働者を受け入れてきたが、かつては薄給激務のため、外国人労働者すら逃げ出す、という事態がたびたび起きていた。
「技能実習生が逃げ出して不法滞在中に犯罪を犯すなどの報道もありましたが、この数年でかなり処遇も改善された。はっきり言うと、待遇が日本人労働者に近づいてきたわけです。こうなると、なぜ外国人と日本人が同等なのか、さらに日本人から不満の声が上がる。賃金が低く激務だからといって敬遠していたのは日本人ではないかと思うのですが、結局、ただ単に働きたくないという自分勝手ではと思うしかありませんよ」(中山さん)
3K職場だけではなく、ありとあらゆる現場において「人手不足」が叫ばれる日本。にもかかわらず、日本人労働者が余り、人が足りない現場には外国人が投入される。もちろん、低すぎる給与や待遇の悪さは是正されるべきで、その改善がないままに「働け」と強制することも正しいことではない。しかし、ここで紹介したように、少なくない職場、現場において、もはや日本人より外国人労働者が求められているという現実がある以上、我々日本人はもっと危機感を持つべきではないだろうかと強く感じる次第だ。