六代目山口組は2015年から続く山口組分裂抗争を終結するべく、分裂して出て行った神戸山口側を弱体化するため切り崩しにかかっていて、六代目山口組系組織へ移籍や合流するものが後を絶たないと聞くが、戻ってくる者を快く思わない者もいる。昔気質の元組長には、六代目山口組に戻るという幹部を何とか阻止しようとした金容疑者の心情もわかるのだろう。
金容疑者は逃亡中の2022年1月にも、水戸市にある六代目山口組系の事務所で幹部を射殺した殺人容疑がかかっている。身内だった幹部を撃ち、逃亡生活を続けなければならなくなった身の上からすれば、抗争相手に対する恨みは深かったに違いない。
金銭トラブルが多い内輪もめ
2023年の5月26日には、東京のJR町田駅に直結するターミナルビルにある喫茶店で、暴力団幹部が元組員の男に発砲されるという事件が起きた。血まみれで駅の構内に倒れている幹部の姿はSNSですぐに拡散された。「金に困った元組員に幹部が金を貸してやったが返ってこない。いつ返すかただしたところ、返せなくなった元組員が幹部を撃ち殺した。世間でもあるような金絡みの犯行だ」(元組長)。世間の金銭トラブルと違うのは、加害者が暴力団組員だったため拳銃が手元にあったことだ。
ヤクザの内輪もめにも色々あるが、やはり金銭トラブルによるものが多いらしい。歌舞伎町で起きた事件も身内同士の金銭トラブルが原因なのか。事件から3日後に自首してきた容疑者は「酔っていた。私がしたことに間違いありません」と容疑を認めたという。容疑者を知る組員から話を聞いた元組長は、容疑者のことを「酒に弱かった」と明かす。何らかのトラブルがあったというより酒が原因ではないかということらしい。意識不明になるほど相手を殴り、3日後に自首してきたということについてはどう思うのか聞くと、元組長は「殴りすぎて我に返ったというところじゃないか」とサラリと答えた。その言い様は、ヤクザの世界では特段、珍しいことではないという感じだったが、真相はどうなのか。
当時、事務所には容疑者と被害者となった幹部の2人しかおらず、警視庁は何らかのトラブルが2人の相手にあったとみて経緯を調べている。