『THE SECOND』に参戦(C)フジテレビ
まさとの決断を聞いたボケ役、ぼんちおさむも即ゴーサインを出した。
「この歳になって、いちばん怖いのは慣れ。刺激がなかったら、ただ老けていくだけじゃないですか。まだドキドキ感を味わいたい。そのためにもチャレンジせなダメなんですよ。僕は90歳まで『おさむちゃんで~す』ってやってたいんで」
THE SECONDのネタ時間は6分。テレビ番組としては長い方だが、普段、2人が主戦場にしている寄席の持ち時間は10分から15分程度なので、それでもかなり短い。しかも、彼らの持ち味は、おさむの突発的な暴走にある。大きな赤ん坊のようにわけのわからない言葉を発し、舞台上を駆けずり回る。その無軌道ぶりは、たっぷり時間があるからこそ効果的だし、生きてもくる。そこをどうクリアするのか。まさとは、こう決意を口にする。
「5分半のネタをやります。30秒、余裕をみてます。それでも長くなるようだったら、途中でどんどん端折りますよ」
漫才で武道館を満員に
昨今、安易に「レジェンド」という言葉が使われがちだが、ザ・ぼんちこそ、正真正銘のレジェンドである。
その昔、「漫才ブーム」と呼ばれた時代がある。その中心は、1980年4月から1982年6月まで計11回放送された『THE MANZAI』(フジテレビ系)という漫才のネタ番組だった。おそらく、あの2年と数か月ほど日本国民が漫才に熱狂した時代はない。ここからツービート、島田紳助・松本竜介、B&Bといったスターコンビが次々と誕生した。
ザ・ぼんちは、その激流とも呼ぶべきブームのど真ん中にいた。トレードマークは、紺のブレザーと白系のコットンパンツというアイビールック。愛嬌たっぷりで子どもから大人気だったおさむと、端正なルックスで女性の支持を集めたまさとの組み合わせは、他のコンビにはない華があった。
『THE MANZAI』の第1回の放送日、4月1日の翌日からザ・ぼんちの人生は一変した。飛行機で長崎まで移動しているとき、客室乗務員にサインを求められた。テレビの力を実感した瞬間だった。『THE MANZAI』のネタ時間は8分だったことから、まさとは「奇跡の8分間」と呼ぶ。
「あそこから、人のいないところで漫才をやることがなくなった。どこへ行ってもいっぱい」