なぜスニーカーは人を惹きつけるのか。過熱するスニーカー投資についても聞いた
「見せびらかすための場」が熱狂を生む
──ブームの浮き沈みを乗り越えるためにも、「モノではなく、カルチャーを売れ」。これがビジネスを成功させるために、本明さんが一貫して説かれていることですね。
モノはいつか売れなくなるので、カルチャーを売らなければいけない。スニーカーのカルチャーの原点は、ヒップホップであり、スケボーであり、裏原です。こうしたカルチャーと一体化して、スニーカーは世界中にブームを巻き起こしました。とくにスニーカーは音楽とつながっているので、世界に広がりやすかったと思います。
──カルチャーになる条件が本にいくつか書かれていますが、重要な一つが、「見せびらかすための場があること」。最近は、SNSもその格好の場になっています。
スニーカーって、若者が熱狂しているという点では、ポケモンカードと同じだと思うんですよ。でも、ポケモンカードって、見せびらかせないじゃないですか。対してスニーカーは、高い靴を履いて街を歩いていれば「おーっ」って思われるし、モノがあるからSNSにも載せられる。
──「フィジカルなモノに対する信奉が強い日本」と書かれています。だからNFTスニーカーが登場しても、日本では苦戦している。
ネットでは体温が感じられないから。やっぱり、温かくないとダメなんです。だから今はみんな、ペット飼うんです。
面白いなあと思うのは、スニーカーには「並び」っていうものがあるんです。限定品が発売される日に、朝から店舗に並ぶんです。で、抽選で当たっても当たらなくても、並んだ人たちで飲みに行く。朝、10時くらいから飲める、上野とかに行って飲む。スニーカーは、そういうコミュニケーションの手段でもあるんですね。オンラインでもコミュニケーションできるかもしれないけど、体温はないですよね。
──どれだけデジタルが発達しても、「店舗」があることに意味があると。
店舗があれば、お客さんと直接コミュニケーションできるんですよ。僕に会ったことがなくて、僕のことを金の亡者だと思っている人がいたとしても、実際に会ってしゃべったら、そんなに悪い人間じゃないなと思ってくれるかもしれないじゃないですか。僕、画像で見るより、しゃべったほうが好かれるタイプだと思います(笑)。