医師の腕次第な健診・検査
アメリカでは禁止の「遺伝子検査」
新型コロナウイルスの流行を機に、自宅から郵送でできる手軽な検査に注目が集まったが、その中にも落とし穴は存在する。口腔粘膜の細胞や唾液を送るだけで、疾患やがんのリスク、性格や体質がわかる「遺伝子検査」を受けたT子さん(56才/女性)が言う。
「郵送で3万円くらいする検査を受けました。結果として肺がんや白血病などのリスクがほかの人より高いと出ましたが、よくよく考えると“じゃあどうすればいいの?”という感じです」
高額にもかかわらず、そうした遺伝子検査の信用度は低いと森さんは言う。
「アメリカではデメリットの方が大きいゆえ遺伝子検査が禁止されているので、日本でビジネスをしようとさまざまな企業が参入している状況です。占い程度に楽しむならいいですが、医学的なエビデンスはない」
予防のために何度も骨密度検査を受けることも、アメリカからは“NO”をつきつけられている。
「X線を用いたDEXA法が一般的ですが、アメリカの医学界では10年に1回受ければ充分とされている。骨密度は閉経後に低下するといわれますが、すぐに骨粗しょう症になることはなく、数年で急激に悪化することもないと証明されています」(室井さん・以下同)
検査項目や機械が同じなら、どこで受けても同じだと思うかもしれないが、「医師の腕」も運命を左右する。
「残念ながら画像診断の腕は、医師によってばらつきがあります。勉強会が頻繁に開催されている病院もあれば、まったく開かれない病院もあるので、技術力におのずと差が表れる。聴診も肺の音や血管の異常音など、さまざまな音を聞き分けるスキルが求められる。聴診だけで心臓音の異変に気づいて病気が見つかるケースもあります」
痛くて苦しいイメージが強い胃や大腸の内視鏡検査も、谷本さんによれば「いい医師に当たれば苦しさや、痛みはない」と言うから、口コミなどで医師の腕も見極めたい。
苦痛を軽減するための対策も進んでいる。
「内視鏡検査の際には、多くの医療機関で静脈麻酔(鎮静剤)を取り入れています。全身麻酔ではないが、注射によってうとうとと眠ったような状態で検査を受けることができるようになりました」(岡田さん)
マンモグラフィーは痛いのがネックだったが、「無痛マンモ」といわれるMRI検査も登場している。
「検査は痛みや苦しみをがまんしながら受けるもの」という思い込みも、アップデートすべき。だが“最新の技術”ばかりを前面に押し出す施設には注意を。
「施設や病院側にとって、技術を要する特定の病気の治療を行う場合と異なり、無症状の人の健康診断や検査は異常の有無を調べるのが中心で、収益性が求められる。過剰に宣伝に力を入れ、必要以上に高額な検査をすすめられやすい実情があります」(谷本さん)
経営維持のために儲けを優先する病院側を変えることは難しい。だからこそ、利用する側が賢くならなければならないのだ。
(了。前編を読む)
※女性セブン2024年3月21日号