「5000万以上いただいてるおぢ」との証拠LINE
しかし、筆者はこの一文を読んだ時、にわかには信じられなかった。というのも、「頂き女子りりちゃん」としてインターネット上で配信される動画に出演する彼女は、身振り手振りを交え、流暢に話す。その巧みさは、ファンのみならず“同業者”の間でも「とにかく話がうまい」ことで定評があったからだ。
渡辺被告が逮捕される2年前に、自身のYouTubeチャンネル「コレコレチャンネル」で「頂き女子りりちゃん」を取り上げた人気YouTuberのコレコレ氏もこう話す。
「詐欺の対象となる男性との関係を構築することを『リリコミット』と称すなど、ワードチョイスの独特さや、話すときの構成のうまさ、そして最後のオチの付け方など、大勢いる配信者の中でもそのトークスキルは群を抜いていたと思います。生配信をする僕も参考にさせてもらったことがあるほどです」
渡辺被告が綴った手紙の中には《普通に話せるようになりたいなと思いずっと試行錯誤してきて、今は子供のときと比べてすごく普通に近づけた気がします》という一文も出てくる。コンプレックスを克服するようにトークスキルを磨き、“普通”に話せるようになった結果、このような事件を起こしてしまったということなのだろうか。
彼女が出演した「コレコレチャンネル」は大きな話題を呼び、「頂き女子」の名を歌舞伎町から全国区のものとした。現在に至るまでの再生回数は250万回に届く勢いであり、彼女の所業を世の中に広め、逮捕に近づけた1つの要因ともいえるだろう。しかし筆者は、渡辺被告は、ひょっとしたら、逮捕された今が、これまでの人生の中で一番穏やかな日々を過ごしているのかもしれないとも考えている。留置所の中にはホストクラブからの「カケ」もなければ「おぢ」からお金を引っ張るために、あの手この手を考える必要がない。また、皮肉なことではあるが「詐欺」や「脱税」での逮捕に怯えることもない。物理的には何にも脅かされることなく、自らの失われた「義務教育の時間」を、学習することによって取り戻そうとしている──。
一度、渡辺被告から体調不良を理由に面会を断られた際も、その後《この中に入って毎日安心安全にくらしてるおかげで動物的には弱くなった気がします!笑落ち着いた気持ちで読書をしたり、未来のことを考えて勉強したりねむることだけを意識しながらすいみんをとったり。人間ができる当たり前のことがホス狂い時代何もできなくなっていたんだなあとこの中に入ってから実感しています。ずっと「今」しか見えてなかったな、と》という文言の手紙が届いた。
前出のコレコレ氏も、「歌舞伎町時代」の渡辺被告が抱えていた「危うさ」についてこう話す。