この状況を見て、ほくそ笑んでいるのが岸田首相(写真/共同通信社)
世耕事務所に聞いたが、期限までに回答はなかった。
自民党の裏金問題では二階氏の秘書も派閥パーティー収入約3000万円の不記載で略式起訴された。野党側は二階氏の政倫審出席も求めているが、二階氏本人は出席しようとしない。
ハレンチ懇親会問題でも追い詰められたのは安倍派の世耕氏のほうだ。
それに対して安倍派も反撃に出ようとしている。安倍派関係者がこう怒りを向ける。
「裏金問題では秘書が立件された二階さんのほうが責任は重いはずだ。それなのに、政倫審に応じているのは安倍派の幹部ばかり。二階さんが出たくないと拒否するなら、参院のように衆院でも政倫審への出席要請を議決して引っ張り出せばいい」
安倍派も二階派も、派閥解散を表明しながら、やっていることは派閥抗争そのものではないか。
反岸田が消えていく
そうした状況を見て、ほくそ笑んでいるのが岸田首相だ。
「ハレンチ懇親会問題の発覚で参院政倫審開催に弾みがついた。裏金問題で取り潰しになって官邸に恨みを持つ安倍派や二階派追及が強まるから、総理にすれば、願ったり叶ったりだろう」(官邸スタッフ)
藤原氏や中曽根氏の役職辞任さえも岸田首相には好都合だったようだ。
元青年局メンバーの自民党中堅議員が語る。
「藤原青年局長や中曽根局長代理は党改革の旗振り役で、総理に『改革が断行されない場合、青年局が主導し、新しい自民党をつくる覚悟だ』と明記した提言書を突きつけた急進派だ。総理は青年局の反岸田の動きを警戒していたから、懇親会問題でトップ2人を切り捨てた。懇親会問題の発覚そのものが官邸の仕掛けという見方まである」
醜聞が出たことで、反岸田に転じかねない急進派が表舞台から消えたのだ。政治ジャーナリスト・野上忠興氏が指摘する。
「岸田首相は自民党内から岸田おろしの動きが始まることを恐れるあまり、今回のようなチャンスを見つけては、自分から手当たり次第に各派閥に矢を射込んで焼き尽くそうとしている。自民党は内戦状態に入った」
政権も自民党も断末魔の叫びをあげ始めた。
※週刊ポスト2024年3月29日号