いちばん売れている国語辞書。その中身は
総ルビ・オールカラー見ていて楽しい
この辞典はすべての漢字にルビが振ってある。「元気」というレベルの漢字にもだ。
恥をさらせば、長いこと私は「言質」という熟語が読めなくて、「げんしつ」だと思っていたの。こういう「ん?」と思う言葉って、ほかにも結構あるんだけど、総ルビだと一気に漢字が怖くなくなる。
オールカラー(カラー写真とイラストを約1100点、表やグラフは約230点収録)で、写真やイラストがたくさん載っているのも楽しい。花や鳥の名前も写真やイラスト付きだし、色が何しろ圧巻。松田聖子の『瑠璃色の地球』という曲を聴くたびに「瑠璃色ってどんな?」と思っていたけど、その微妙な色がこの辞典にはカラーでくっきり載っているの。
あと、“簡単だけど使い分けが微妙な言葉”も‥‥例えば「とる」という言葉は「取る・採る・捕る・執る・撮る」など、いろいろあるけど、その用例もきっちり説明されている。
アクセントが明記してあるのもありがたい。茨城出身の私は「箸」と「橋」のアクセントの違いが身についていなくて、相手にいつも首をかしげられる。でもこの辞典は、高く発音するところが太字になっているから正確なアクセントがわかる。
知識がどんどん増えていく
「ウソッ!」と感心することはまだある。
コラムが実に充実しているのよ。例えば、「『満年れい』と『数え年』」というコラムには、
《生まれたばかりの赤ちゃんはゼロさいで、次のたんじょう日が来てやっと一さいです。このようにたんじょう日ごとに年をとるのが「満年れい」の数え方です。
これに対して、むかしは「数え年」を使い、生まれた時を一さいと数え、正月が来るたびに年をとりました。これだと、十二月に生まれた子はわずか一か月で二さいとなり、同じ二さいでもだいぶちがいが出てしまいます。今は満年れいで数えるので、このようなちがいはなくなりました。》
とある。
実は私、学齢前から大人が交わす会話の内容をかなり把握できていたの。子供の前だと気を許して態度を変える人の表情とか口調、教師のあてこすり、そういったことをよく理解していたから、後々取材をするときに大いに役立ったわけだけど、この辞典は子供にいろいろな知識を正しく丁寧に教えてくれる。
「そうなんですよ。単に言葉を説明するだけじゃなくて、その背景や、ちょっとした疑問にも解説を加えてくれているから、この辞典に子供が親しんでくれれば、頭のいい子に育ってくれるんだろうなぁ、って思わず期待しちゃうんですよね。
写真やイラストが豊富で図鑑の要素もあるし、幅広い知識も与えてくれる。辞典というより『百科事典』だと思うんです」
とH子は笑みを浮かべた。
結論──
この辞典は孫や子供の世代にだけ渡していたらもったいないって。アラ還の調べ物、読み物にも最適だと私は見たね。
取材・文/野原広子
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2024年3月28日号