三浦璃来&木原龍一の“りくりゅう”ペア(2023年3月世界選手権。写真/共同通信社)
「先生は、出産したあとも復帰できたんだから、跳べるよ」
連覇のかかる世界選手権に向けては──。
「練習拠点もカナダなので、時差や移動の負担が少なく本番を迎えられるはず。お互いの怪我をサポートしあいながら、それでも力強く、人の心に届く優しい演技をする2人に期待しています」
将来的には、大技である4回転スロージャンプにも意欲的な2人。世界女子初の4回転ジャンパーである安藤さんの目にはどう映るのか。
「中国のペアのスロー4回転サルコウは凄い迫力でしたよね。見てみたい気持ちはあるけれど、怪我のリスクも大きい。4回転が無くても勝てるペアなので、無理してほしくない気持ちもあります。でも跳んだら後輩たちの血が騒ぐかもしれません(笑)」
「それに」といって続ける。
「実は、自分もペア競技をやってみたかったんです。ジュニア時代に米国でちょっと教わったこともあって。自分は(投げられても)怖さの無かったタイプなので、新しい挑戦としてやりたいと思っていました」
アイスショーでは現役の安藤さんなら現役復帰も可能ではないか──。そう聞くと笑って答えた。
「もう競技はしないです(笑)。今季からは、田内誠悟選手のコーチを始めて、充実した時間を過ごさせてもらっています。自分が滑るという意味では、昨年秋に肩の手術をした後、ショーに向けて練習をした時に、最初はジャンプが怖かったんです。その時に田内選手から『先生は、出産したあとも復帰できたんだから、跳べるよ』って言われて、自信に繋がって……。教え子に刺激をもらいました。コーチ業を始めたことで、もう一度スケートと向き合うきっかけになっているなと思います」
スケートと改めて向きあうからこそ、後輩たちの活躍を温かいまなざしで見つめる。
「今は、りくりゅうに憧れて、ジュニアのペアも育ってきました。りくりゅうは『日本はペアも強いんだよ』というのをアピール出来る2人なので、挑戦心も含めて日本ペア時代の鏡になってほしいです」
(後編につづく)
取材・文/野口美恵