まる子ははまり役だった(オフィシャルブログより)
後任選びはオーディションで
作品のイメージを一変してしまいかねないだけに、病気や死去など、よほどの事情がない限り声優が交代することはない。だからこそ一度キャスティングされた声優が受ける重圧は相当なものだ。
映画『風の谷のナウシカ』(1984年)のナウシカ役やアニメ『めぞん一刻』(1986年)の音無響子役など、数々の人気作品で声優を務めてきた島本須美さん(69才)が語る。
「かわいい声のキャラクターを演じていた人が風邪でガラガラ声になってしまい『別の日に収録しましょう』ということはありましたが、まれなこと。大抵、収録は強行されます。
毎週収録があるレギュラー番組だと、編集が間に合うならスケジュールを変更することも可能ですが、ストックがなくギリギリの状況では喉が痛いなんて言っていられません。多くの声優たちは“自分のせいで放送に穴をあけられない”と体調管理には必死です」
何十年も同じ声をキープするための苦労もある。
「年齢を重ねると高音を出すのがどんどんきつくなっていくので、発声練習は欠かせません。
私を含めて生涯現役を目指す声優さんは多いですが、口が回らなくなったり、『思うように声が出せない』と感じるようになると、引退が頭をよぎるのかもしれません」(島本さん)
TARAKOさんの場合、こうした日々の鍛錬に加え、晩年は病魔との闘いもあった。34年という長期間、小学3年生のまる子を大事に演じてきたのだ。それゆえ“2代目まる子”の選任は、制作サイドにとって神経質にならざるを得ない。
TARAKOさんの後任はどうやって決めるのか。
「制作サイドの要望や声優事務所の推薦などを受け、ある程度絞られた人たちの間でオーディションが行われると思います。
TARAKOさんと声が似ている方が、視聴者が持つ違和感は少ないですが、子供の声は意識してテンションを上げたり声を作って演じる場合も多く、できる声優さんは限られてきます。TARAKOさんの声に『似せる』のか、『まったく変える』のか。どちらを選ぶにせよ、時間をかけて検討することになるはずです」(島本さん)
最近のアニメ界の潮流として新人声優が大抜擢、という可能性もあり、“仁義なきオーディション”になるかもしれない。
まる子に「声」という命を新たに吹き込むのは誰になるのか──。
※女性セブン2024年4月4日号