親日路線を貫いた尹政権を「日本に擦り寄る屈辱外交」と断じていた李在明氏(時事通信フォト)
韓国大統領選挙(6月3日投開票)で、野党「共に民主党」代表の李在明氏(61)が当選した。北朝鮮への不正送金疑惑や土地開発不正疑惑など7つの事件の11容疑で起訴され、“疑惑のデパート”と称されてきた李氏。公職選挙法違反に問われた裁判では、5月1日に最高裁が二審の無罪判決を破棄し、審理をソウル高裁に差し戻し。まさに“有罪目前”で迎えた大統領選だった。コリア・リポート編集長の辺真一氏が語る。
「数々の疑惑は百も承知で、それでも多くの韓国国民が李氏を支持したという事実は大きい。尹錫悦前大統領の戒厳令への反発は想像以上に根深いものでした」
李氏は親日路線を貫いた尹政権を「日本に擦り寄る屈辱外交」と断じ、福島原発処理水を「核汚染水」と呼ぶなど、日本に対する強硬姿勢を鮮明にしてきた人物だ。
「大統領候補者の討論会では『日本は重要なパートナー』『両国の友好関係を強化する』と発言しましたが、これは現実路線の姿勢を見せて保守層の取り込みを狙ったもの。『元慰安婦の名誉を回復し、保証を最大限引き出す』とも言っており、就任後には“反日”に転じる可能性が高い」(在韓ジャーナリスト)
漢陽女子大学(ソウル市)助教の平井敏晴氏は、こうした反日的な姿勢以上に「日本の国防上の大きな懸念」と話すのは、“親中派”とされる李氏の中国に対するスタンスだ。
「前回2022年の大統領選の討論会で、李氏は就任後したら『最初に中国を訪問する』と回答し、米国よりも中国を重視する姿勢を示しました。李氏の就任後、習近平が接近するのは時間の問題でしょう。中韓の接近が日本に与える影響は無視できません」
そのひとつが「台湾有事」だ。近い将来、中国が武力で台湾を制圧する可能性が叫ばれるなか、大統領選を控えた今年5月、李氏は遊説先の大邱でこんな発言をした。
「中国にも謝謝(シェイシェイ)、台湾にも謝謝。中国と台湾がケンカしようが、我々と何の関係があるのか」
“中立宣言”ともとれるこの発言を受け、トランプ政権が李氏への警戒を強めたとする報道もあった。平井氏が続ける。
「最悪のケースは、日米韓による中国包囲網から韓国が抜けてしまうことです。こうなると、安全保障上の日本のリスクは否応なく増してくる」