ロマンス詐欺の相手とのやり取り。自身の投資法で稼げるとうたう一方、見返りには女性の手料理をあげ、親密な関係を引き出していた[被害者提供](イメージ、時事通信フォト)
近年、恋愛感情または投資意欲につけこむ詐欺が増えており、筆者のもとにも「数千万円投資したのに、アカウントが消えて連絡がとれなくなった」「◯◯さんのLINE投資グループの誘いで勧誘したのに、投資した数千万円のお金が戻ってこない」などの相談がよく寄せられる。なぜこの人が詐欺に遭うのかと思わせる、いわゆる「しっかりした人」たちはなぜ、SNS型詐欺にのみ込まれてしまうのか。
社会的地位が高い裕福な美男美女を装う
恋愛感情につけこむ詐欺は、インターネットがなかった時代から存在はしてきた。だがSNSの普及によって、被害の様相に変化が見られる。対面しないままに恋愛感情を持ってもらうためには、プロフィールが重要だ。そのために、なかなか会えないのが普通で、発言内容の不自然さも「違う国の人だから」と勝手に了承してもらいやすい日本人以外を名乗ることが多い。
警察庁の発表によると、被疑者側が称した国籍は、韓国、中国、台湾などの東アジアが35.2%を占める。その他、海外在住の日本人、タイ、インドネシア等の東南アジア、米国等の北米、欧州の順に多くなっている。
称する職業は会社役員(18.6%)が最多で、投資家(17.4%)、医師などの医療関係者(13.9%)、軍関係(10.2%)、芸術・芸能関係(5.2%)、学者などの著名人(0.5%)などとなっていた。
プロフィール写真は、美男美女のものがほとんど。つまり社会的地位が高く、裕福で、外見の良い魅力的な異性を装って近づいてくるというわけだ。もし、対面で外見を完璧に作り込まれたら、たぶん不自然だと敬遠されやすくなるだろう。ところが、SNS越しで見る彼ら彼女らは過剰さが薄れ、なぜか自分にだけ親しげに振る舞ってくれていると思わせる。
前出の被害を訴えた例や、報道で目立つからか、SNSロマンス詐欺の被害者は女性が多いと思われがちだが、実際には女性が51.6%で男性が48.4%と、女性の被害がやや多い、という程度の差しかない(警察庁調べ)。では被害額に男女差が顕著かというと、こちらもそれほど差はない。個々の被害額は500万円以下が多いが。1億円を超えるものも複数件数あるが被害者は男女同数だ。最多の被害額は投資名目のロマンス詐欺で、約3億6000万円。被害件数の7割超が投資名目で、金銭を要求されていたという。
恋愛感情ではなく優良な投資への勧誘から始まるSNS型投資詐欺でも、被疑者は、ロマンス詐欺と同様に、ほどよいもっともらしさを演出している。
被疑者側が称する職業は投資家が約6割を占め、会社員や会社役員、その他著名人などを騙り、SNS上で投資を勧めてくる。前澤友作氏や堀江貴文氏、田原総一朗氏など、投資に精通していそうな著名人を騙るケースも多い。こちらも500万円以下の被害が多いが、数千万円から1億円を超える被害も発生している。