元々は軽キャンピングカーで47都道府県を旅するカップルYouTuberのチャンネルだった
「受ける治療も決めきれていない状況でしたが、みずきに最良の治療を受けてもらうにはまとまった額のお金が必要だと思っていました。『クラファン』という言葉を使えば炎上するだろうということは覚悟していましたが、炎上の拡散力にすがりたいと思うほど、とにかく必死でした。案の定、ネットニュースで概要しか見ていない人からの、『詐欺だ』『どうせ嘘だろ』という声が増え始めました」
徐々に増え続ける詐病を疑う声に、みずきさんは怒りや悲しみよりも驚きが勝ったという。
「こうへいくんはある程度イメージできていたのかもしれないけれど、私自身はネットの悪意のような部分に触れたのが初めてだったので、戸惑いました。こんなひどいこと言う人がいるんだ、という驚きが強かったかな。まだ気持ちに余裕があった頃は、誹謗中傷の理由が気になって、書き込んでいる人のアカウントを覗いたこともありました。ある人は“ストレスの発散になるから”という内容を発信されていたりして、私たち、悪くないなって思ったり(笑い)。もちろん、『なんで嘘だと言われないといけないんだ』という気持ちもありました。がんの宣告が嘘だったらよかったのに、というのは何度も思っていたので」(みずきさん)
ステージ4のすい臓がんを宣告された彼女とそのパートナーに心ない言葉をぶつけること自体が信じられないことだが、事態は悪化する。2023年2月、当時登録者数約200万人の暴露系YouTuberのもとに、「詐病でお金を集めているYouTuberがいる」という告発があり、数万人が視聴する配信内で取り上げられたのだ。
「これまでのアンチは、単に私たちのことが気に入らなくて、一挙一動をあげつらっていた感じだったんですけど……。この一件で、より悪質な方に見つけられてしまった実感がありました。誰でもいいからターゲットを見つけて、誹謗中傷をしたい人っていうのかな。誹謗中傷の量もかなり増えましたし、なかには住所などの個人情報を特定しようとする人も現れました。外に出るのが怖くなったり、自宅のセキリュティーを気にし始めたりと、生活に支障が出始めたのはこの頃からです」(みずきさん)
2人は暴露系配信者と配信外でやり取りを行い、診断書などを見せ、がんである証拠を提示した。その結果、暴露系配信者は、後日行った配信内で「自分は嘘だとは思えない」と語ったという。しかし、みずきさんの詐病を疑う声が消えることはなかった。
「『がんをネタに詐欺をしている2人』という印象の方がセンセーショナルじゃないですか。一度センセーショナルな印象が拡散してしまうと、なかなか払拭できなくて。暴露系配信者が“やっぱり詐病ではなかった”と認めたエピソードは、その方のファン以外にはほとんど拡散されないんですよ。本当に勘弁してほしいです」(こうへいさん)