退院後の2020年1月、買い物姿も目撃された池江

2020年1月、買い物姿も目撃された池江

母娘は互いのことを口にしなくなった

 2023年7月、6年ぶりに出場した「世界水泳選手権」で現実を突きつけられた。

「得意の100mバタフライと50m自由形で、まさかの予選落ちを喫しました。50mバタフライで7位入賞を果たして意地を見せましたが、世界とは渡り合えませんでした。それでも、レース後のインタビューで“いちばん喜んでくれていたのは母だと思う”と涙ながらに感謝を口にしていました」(前出・競泳関係者)

 ところが、最大の理解者であるはずの母への言及が、その日を境にピタリとなくなった。娘とタイミングを合わせるように、母にも変化があった。

「美由紀さんはそれまで“池江璃花子を育てた母”“白血病と闘う娘の母”としてメディアに出たり、講演活動を積極的に行ってきました。ですが、2023年7月を最後に、美由紀さんの活動を告知するSNSのアカウントが更新されなくなったんです。その頃から講演も控えるようになりました」(別の競泳関係者)

 2人の間に何があったのか。世界選手権以降、池江は自問自答を繰り返していた。

「世界との埋まらない力の差に不安を覚えたこともあって、さまざまな不調も抱えていたようです。インタビューで自分のことを振り返ろうとすると苦しくなることもあった。誰もいないところで、ひとり涙したこともあったそうです」(前出・競泳関係者)

 このままではパリに行けない──そう痛感した池江は大きな決断を下した。2023年10月、活動拠点を競泳強豪国のオーストラリアに移したのだ。常に追われる立場の日本では、自分の可能性を狭めてしまう。追う側に回ることで、意識を変える狙いもあったのだろう。だがこの決断は、母の支えとの決別も意味していた。

「公私にわたって支えてくれた母のもとを離れる不安もあったはず。美由紀さんにも寂しさがあったようですが、背中を押したのは美由紀さんだったようです。強くなるためには“別れが必要”だと感じたのかもしれません。池江さん関連の仕事から距離を置いているのは、覚悟をもって離れた娘を、そっと見守りたいという気持ちがあるからなのではないでしょうか」(美由紀さんの知人)

 以前、産経新聞の連載コラムに美由紀さんはこう綴っていた。

《子供はいつか必ず親離れしますし、またそうなってくれなければ困ります。そのためにはまず、親自身が上手に子離れできるよう、自分の生き方に輝きを持つことが大切です》

 オーストラリアに渡った池江は、新たな気持ちで練習に打ち込み、不屈の精神でパリへの扉を開いた。それでも池江は満足していない。今大会、彼女は複数種目でのパリ五輪出場を目指していたが叶わなかった。出場権を逃したレース後、池江は悔し涙に暮れた。

「また一からやりたい。もっと自分に自信をつけないと、トップにはなれない」

 そう決意を新たにした。美由紀さんはその様子をスタンドで見守っていた。そしてこう投げかけたはずだ。

「璃花子、できるよ」

 奇跡の物語は、4か月後のパリへと続く。

※女性セブン2024年4月11日号

関連記事

トピックス

大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
“進次郎劇場”で自民党への逆風は止まったか
《進次郎劇場で支持率反転》自民党内に高まる「衆参ダブル選挙をやれば勝てる」の声 自民党の参院選情勢調査では与党で61議席、過半数を12議席上回る予測
週刊ポスト
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト