テロ攻撃のあったクロッカス市庁舎のコンサート会場。会場では大規模火災も発生(写真=SPUTNIK/共同)

テロ攻撃のあったモスクワ郊外のクロッカス市庁舎・コンサート会場。会場では大規模火災も発生(写真=SPUTNIK/共同)

キーウへの早期侵攻

 私は本件犯行にはウクライナ政府の関与はなく、主導したのは、あくまでISである可能性が高いと見ている。退路を確保していた点では自爆テロを重視するISらしくないが、ISは統率された組織ではなく、共通の政治目的を持った過激派のネットワークだ。シャーリア(イスラム法)による唯一のカリフ(皇帝)が統べる帝国の実現のためなら手段を選ばないと考えたほうがわかりやすい。

 実行犯4人は全員、タジキスタン国籍。隣のアフガニスタンに拠点を置く「ホラサン州のIS」ならば、今回の作戦を実行してもおかしくない。

 ISの内在的論理は何か。彼らからロシア・ウクライナ戦争を見てみると、キリスト教徒の内輪揉めに映る。優勢のロシアにテロを仕掛ければ、終戦を遠ざけ、キリスト教同士の殺し合いを長引かせられる。その先に望むのは米国の直接介入だ。

 憂慮すべきことにISの謀略は成功しつつあり、戦争が別の段階にエスカレートする可能性がある。

 3月23日、プーチンは声明の中で次の事実を指摘した。

「実行犯はウクライナに向けて移動していた」

「ウクライナ側には国境を越えるための窓口が用意されていた」

 捜査が進むと資金調達やアジトの提供に関与したウクライナ人が浮上する可能性はある。そこにゼレンスキー政権が関与したかは別問題だが、プーチンが「関与があった」と認識した場合に事態は一気に深刻化する。ロシアは独自の価値観に従って行動する国で、イスラエルとよく似ている。「生存権が脅かされた」と受け止めた途端、国際社会から何と言われようとその敵を殲滅する。2023年10月以降のガザ侵攻がウクライナで起きるとイメージすればいい。

 ロシアがギアを上げた場合、首都・キーウへの早期侵攻が射程に入る。兵員だけでなく、大統領府や保安庁、国防省の建物、職員や文民もターゲットになる。攻撃を止めるのは相手が帰順(服従、降伏)するか、逃げるか、さもなくば死んだ時だ。

 こうなると西側は見過ごせなくなり、アジアや米国まで戦火は広がらないとしても、第三次欧州大戦の危機が急迫してくる。大統領選挙を今年11月に控えた米国は踏み込めるのか。米国が躊躇し、欧州がその姿勢に影響されれば、力で現状を変えたロシアの勝ちになる。

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