ライフ

【新刊】伊集院静さんへの愛惜が止まらなくなる“大人の流儀名言集”『風の中に立て』など4冊

「『詮方ないことを口にしなさるな』母は私にそう教えた」(本書の中の名言より)

「『詮方ないことを口にしなさるな』母は私にそう教えた」(本書の中の名言より)

 春は出会いの季節。これまで馴染みがなかった分野の本を手に取れば、思いがけない発見があるかもしれない。おすすめの新刊を紹介する。

『風の中に立て ─伊集院静のことば─ 大人の流儀名言集』/伊集院静/講談社/1100円
 余談から。伊集院さんに昔「借金のコツは同じ人から借りること。貸すほうは回収不能を恐れてまた貸してくれる」と直に教わった。女友達に2回目の借金を申し込まれた時その教訓を思い出したが、断ると本当に回収不能に。伊集院さんは正しかった。本書にも今後身をもって知るだろう名言が多々。生老病死にまつわる「サヨナラ」が身にしみ、氏への愛惜が止まらなくなる。

無愛想な70代女店主と、30代バイトが無敵のコンビになるまで

無愛想な70代女店主と、30代バイトが無敵のコンビになるまで

『定食屋「雑」』/原田ひ香/双葉社/1760円
 夫から離婚を切り出された沙也加は、近所の定食屋「雑」でアルバイトを始め、その調理法に驚く。店主の老女「ぞうさん」は肉ジャガなどほとんどのものの味付けをすき焼きのタレで済ますのだ。「ぞうさん」の半生、店名の由来、沙也加の離婚話、常連さんの異変など、定食屋さんって地域の“広場”なんだなあとの思いを新たにする。コロナ禍を経て始まる“雑の未来”に乾杯だ。

議員にして土地開発事業者。たくましい商魂で日本の風景を変えた男

議員にして土地開発事業者。たくましい商魂で日本の風景を変えた男

『堤康次郎 西武グループと20世紀日本の開発事業』/老川慶喜/中公新書/1320円
 堤康次郎(1889〜1964年)は早大生の時これからは株ではなく土地だと察知。箱根や軽井沢、学園都市の開発に乗り出し、新中間層に住宅や余暇施設を提供する。軽井沢の百坪の別荘が1935年当時500円の特価だったとは!? 敗戦後は池袋に西武百貨店を開業。急死後、事業は堤清二と異母弟の堤義明に引き継がれた。全身起業家。豪快な土地開発を通じて知る日本の戦前戦後史だ。

キャプション
第3回警察小説大賞受賞作。元社会部記者がものした検察ミステリ

キャプション 第3回警察小説大賞受賞作。元社会部記者がものした検察ミステリー

『転がる検事に苔むさず』/直島翔/小学館文庫/847円
 東京地方検察庁の浅草分室で、倉沢ひとみを部下に検事として働く良き家庭人の久我周平。浅草で起きた若い男の死亡事件を他殺ではないかと疑い、倉沢とともに探り始める。警察小説は人気でも、検事が主人公の検察ミステリーというのは珍しい。大川原化工機冤罪事件や自民党裏金問題の少なすぎる取れ高など、ガッカリ続きの日本の検察。久我に一筋の光明を見いだす思い。

文/温水ゆかり

※女性セブン2024年4月18日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ハワイ別荘・泥沼訴訟を深堀り》大谷翔平が真美子さんと娘をめぐって“許せなかった一線”…原告の日本人女性は「(大谷サイドが)不法に妨害した」と主張
NEWSポストセブン
世界的な人気を誇るシンガー・d4vd(20)(Instagramより)
「行方不明の10代少女のバラバラ遺体が袋詰めに」世界的人気歌手・d4vdが所有する高級車のトランクに遺棄《お揃いのタトゥー「 Shhh…」で発覚した2人の共通点》
NEWSポストセブン
須藤被告(左)と野崎さん(右)
《紀州のドン・ファンの遺言書》元妻が「約6億5000万円ゲット」の可能性…「ゴム手袋をつけて初夜」法廷で主張されていた野崎さんとの“異様な関係性”
NEWSポストセブン
神田正輝の卒業までに中丸の復帰は間に合うのか(右・Instagramより)
《神田正輝の番組卒業から1年》中丸雄一、『旅サラダ』降板発表前に見せた“不義理”に現場スタッフがおぼえた違和感
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)の“過激バスツアー”に批判殺到 大学フェミニスト協会は「企画に参加し、支持する全員に反対」
NEWSポストセブン
ラーメン店の厨房は暑い(イメージ)
《「汗を落とすな」「清潔感がない」》猛暑で増えた「汗クレーム」 熱湯で麺を茹で上げるラーメン店やエアコンが使えないエアコン取り付け工事にも
NEWSポストセブン
主人公・のぶ(今井美桜)の幼馴染・小川うさ子役を演じた志田彩良(写真提供/NHK)
【『あんぱん』秘話インタビュー】のぶの親友うさ子を演じた志田彩良が明かすヒロインオーディション「落ちた悔しさから泣いたのは初めて」
週刊ポスト
寮内の暴力事案は裁判沙汰に
《いまだ続く広陵野球部の暴力問題》加害生徒が被害生徒の保護者を名誉毀損で訴えた背景 同校は「対岸の火事」のような反応
週刊ポスト
どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン