それを小さなコーヒーカップに一杯ずつ、3日間続けて飲んだら、体がシャキン、パキンとして、動きがいいのなんの。甘酒は“飲む点滴”なんて呼ばれることもあるらしいけど、なるほど納得。栄養ドリンク以上に即効性と持続性があるような気がしたの。
それでさっそくネットで作り方を調べた。炊き立てのご飯に乾燥米麹と60℃のお湯を入れて混ぜ、その温度のまま6〜9時間保温したら出来上がるという。麹菌が発酵したものだから、甘くても砂糖のような中毒性はない。しかも麹菌は日本でしか作られない菌だとか。そこまで知ったら、もう居ても立ってもいられない。作るしかないっしょ。
甘酒は冷凍保存が可能だから、作りすぎても構わない。そこで最初は、手持ちの電気クッカーに毛布をかけて仕込んでみた。時々、温度計でチェックして電源をオンにしたりオフにしたり、絶えず温度調節をして6時間。おちおち寝ていられないけど元気。卵を孵化させる親鳥のように、それはそれは大切に見守った。
ところが、そんな生活を10日間ほど続けたある日、どうしたことか、体がバラバラになったような気がして起き上がれなくなったの。それでも3日間寝たらなんとなく完治した気がして普通に仕事を始めたんだけど、翌日からまたダウン。這うようにしてかかりつけ医に行って診てもらっても、熱はないし、コロナでもインフルエンザでもない。「疲れが出たんでしょう」と診断されて、処方してもらった薬をキチンキチンとのんだ。なのに、喉のイガイガと咳が止まらない。風邪のような症状が出なくなるまでに2週間もかかったなんて、私史上初めてよ。
もちろん、こうなった原因が何だったかなんて簡単にわかるものじゃないわよ。でも、甘酒で元気になりすぎたことは確か。それで調子に乗って動き回りすぎたことも確かなんだよね。
もう、つくづく思ったわね。前期高齢者3年生はダテじゃない。新しいものを取り入れるときは、たとえ天然自然の甘酒でも慎重に扱わないとダメなんだなって。これを機に凝り性も卒業だなって、あ〜あ、いままで一度も言ったことないことを言っちゃった。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2024年4月25日号