美しい衣装をまとった彼が氷上で妖艶に舞うたびに、会場からはため息がもれた。4月7日と9日、羽生結弦(29才)が故郷の宮城県で開催したアイスショー「RE_PRAY」の追加公演は、大盛況のうちに幕を閉じた。
プロとして表情には出さないが、このとき彼は、心中穏やかではいられなかったはずだ。
《2025-26シーズンをもってしばらく休業いたします》──4月2日、彼の衣装を長年手掛けてきたデザイナーの伊藤聡美さんが、自身のインスタグラムで突然休業を発表したのだ。
「伊藤さんは、国内外の一流スケーターたちの衣装を手掛ける人気デザイナー。『RE_PRAY』で羽生さんが着用した衣装も、その多くが伊藤さんによるもので、公演では羽生さんが衣装に大切そうに手を当てる場面もありました。実は伊藤さんは3月中旬にご自身のX(旧ツイッター)のアカウントを突然削除されていて……彼女に何があったのでしょうか」(フィギュアスケート関係者)
羽生と伊藤さんの出会いは10年前に遡る。14-15年シーズンのプログラム「オペラ座の怪人」以降、毎年衣装を制作してきた。
「フィギュアスケーターにとって衣装は演目の一部ともいえる重要なものです。ただ華やかであればいいというわけではなく、重すぎたり伸縮性が足りないとジャンプが跳びにくくなるので、素材や飾りにとても気を使います。自分の骨格を把握し、要望に的確に応えてくれるデザイナーを見つけることは容易ではなく、羽生さんにとって伊藤さんは“勝利の女神”のような存在だったと思います」(前出・フィギュアスケート関係者)
2014年、ジャンプの不調やけがに苦しんでいた羽生は、彼女が作った動きがある独創的な模様や、体のラインを強調するようなデザインの衣装で臨んだ同年のグランプリファイナルで優勝すると、翌年は世界最高得点を2度更新。2018年の五輪連覇という偉業を成し遂げた。
「休業の理由は、悪質なファンの心ない言動ではないかといわれています。3月に開催されたアイスショーで羽生さんは白い衣装をまとい、新プログラムを披露。この衣装について『エルヴィス・プレスリーの白衣装に似ている』とファンがSNSに投稿すると、伊藤さんはXで『偶然です』、さらに『考察は自由ですが、明確に違う場合は否定します』と反論したんです」(前出・フィギュアスケート関係者)
衣装の「二次創作」をめぐり、こんなトラブルも起きていた。
「ネット上では、スマホケースや応援用の横断幕など伊藤さんの衣装をもとにデザインされたグッズが無許可で製作・販売されています。今年2月には、がまんの限界だったのか、二次創作について自身のインスタグラムで注意喚起を促しました。真摯に衣装と向き合う気持ちが踏みにじられたことに怒りやショックを覚え、一度仕事から離れることを決意したのではないでしょうか」(別のフィギュアスケート関係者)