現役時代の広岡達朗氏(時事通信フォト)

現役時代の広岡達朗氏(時事通信フォト)

江夏は異端児すぎた

 頭の中での構想通りにいけば、世の中まったく苦労しない。前年まで5年連続セーブ王の実績だけを見たら計算できると思うが、相手は江夏豊だ。性格的に広岡と江夏は水と油だと周りは勝手に騒ぎたて、アリゾナメサキャンプでも一触即発するのではないかとメディア陣は今か今かとスクープを待ち構えていた。当時の様子を広岡はこう語ってくれた。

「あの頃マスコミが、俺と江夏の決定的確執の瞬間を狙っていたのは周知の事実だったが、そうは問屋は卸さんだったな。江夏は確かにプロ野球屈指の能力を持ったピッチャーだった。しかし、キャンプでも帽子は被らない、集合時間には遅刻する……これではどうもならん。チームは己のためにあるのではないんだから」

 ベテランだろうと若手だろうと一切特別視せず平等に公平に選手を扱うのをモットーとしていた広岡にとって、江夏は異端児すぎた。広岡も多少のことは大目に見ようとしていたが、あからさまに遅刻されてしまうと立つ瀬がない。ただ、江夏もわがままで遅刻していたわけではない。生まれつき心臓の「心室性期外収縮」の頻発により、心拍数が200以上も超えるために夜も寝つきが悪く、睡眠薬を服用するため朝も起きられなかったのだ。

 松沼博久(元西武で広岡の教え子)がこう言った。「江夏さんを別格として扱ってあげれば、それなりに活躍したと思います。でも広岡さんはそれを許さなかったんでしょうね」。江夏だろうと誰だろうと選手に特権を与えることなど広岡の辞書にない。自分の理論を忠実に理解したうえでゲーム内において臨機応変に判断できる選手を育てていきたい思いがあり、自分が指揮する以上、規律に従って行動をする。これがプロフェッショナルな模範な姿だと頑なに信じていた。

 江夏に何回か広岡について尋ねても、くさすような発言は一度もなかった。

「広岡さんに関しては……パ・リーグの豪快な野球を打ち消して、四番でも右に打ちなさいという勝つ野球。巨人一辺倒の野球界に風穴を開け、西武の黄金時代を作ったのは凄いこと。でも、ファンはどういう野球を見たがっていたかだよね」

 確執が取りざたされた広岡達朗の野球を認めながらも、ファンが求める野球像に問題点を着地させるところがいかにも江夏らしい。

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