バラして売りさばく
「芸術作品の盗難品は、オモテの世界では売却が困難。しかし、いわゆる裏社会では盗品マーケットが存在し、違法に集められた品々が売買されています」
そう語るのは、盗犯捜査を中心に行う警視庁捜査3課のOBだ。
「特殊詐欺グループや麻薬組織の中心人物など、違法な手段で巨万の富を築いた犯罪者の中には、正規ルートで美術品を収集するのではなく、盗難品をコレクションすることで満足感や自己顕示欲を満たす者がいます。世間で大々的に盗難が報じられた品物ほど、価値があるとされます」(前出・捜査3課OB)
そういった上得意の客に、“新商品情報”をもたらすのが、盗品ブローカーの存在だ。
「窃盗集団から集めた商品を売りさばきます。当然、大々的に宣伝しているわけではありません。送った内容が一定期間で消えるメッセージアプリを使って、顧客の好みに合った商品をおすすめしてくる。もちろん、記録が残らないよう支払いは現金です」(前出・捜査3課OB)
今回の純金茶碗は、美術品としての価値も相まって、1000万円を超す値付けがされていた。
「付加価値が大きい一方、一点ものだと足がつきやすい。その点、溶解して金の延べ棒にしてしまえば、価値は大きく下がりますが、売却は比較的容易です。今回の事件では、茶碗の形のまま発見されましたが、“溶かしちゃえばいい”と考える人間も多くいる」(前出・捜査3課OB)
金を溶かして売却するように、宝飾品も「バラして売りさばく」のが基本だという。
「宝飾品の多くはシリアルナンバーが記載されているため、国内の買取店や質店で売却すると足がついてしまう。そこで、ダイヤモンドなどの宝石を取り外し、海外に持ち出すのが王道とされています。2004年に、東京・銀座の宝飾店から総額約35億円の宝飾品を、2007年にも同じ銀座で2億円相当のティアラなどを強奪した国際強盗団の『ピンクパンサー』のメンバーも、国内のアジトで分解し、ダイヤだけを持って出国したことがわかっています。
東南アジアのある国には、入手元を聞かれることなく、匿名ですぐ売却が可能な宝飾品買取店がいくつも存在します」(犯罪ジャーナリスト)