国際情報

【手嶋龍一氏×佐藤優氏対談】第2フェーズに突入した中東情勢の緊迫 イランの核施設の防空網を叩く「能力」と「意志」を匂わせたイスラエル

外交ジャーナリスト・手嶋龍一氏(左)と元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が対談

外交ジャーナリスト・手嶋龍一氏(左)と元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が対談

 緊迫が続く中東情勢。イスラエルのハマス掃討戦は、イランとのミサイル攻撃の応酬に発展し、「第五次中東戦争」の危機が叫ばれている。インテリジェンスの専門家である外交ジャーナリスト・手嶋龍一氏と元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が双方の発信の真意を読み解くと、日本と世界に迫る危機が浮き彫りになった──。【前後編の前編。後編を読む

 * * *

佐藤:イランが4月13日夜から14日にかけて、歴史上初めてイスラエル本国にドローンや巡航ミサイルを発射したことで日本のメディアが騒いでいるが、私は騒ぎすぎだと思う。イランの国営放送が運営するサイト『Pars Today(パルス・トゥデイ)』の発信を読み解くと、攻撃の応酬がエスカレートしない配慮が見られるからです。

手嶋:『Pars Today』は、資金的にも論調もイランの公式メディアと言っていい存在です。

佐藤:イランは攻撃の当日に、『Pars Today』で12のメッセージを発表した。そこには「やられたらやり返す」という、国際社会の原則である相互主義に則り、攻撃対象を軍事目標に限るという意志表示が読み取れます。

手嶋:今回はイランとイスラエル双方が軍事目標の攻撃に徹し、戦闘が拡大する芽を摘む自制が働いていたわけです。

佐藤:イランが発射した無人機や巡航ミサイルは、到達までに数時間かかるもので、イスラエルに猶予を与えている。さらに発射から約4時間後の14日未明には、会見を開いて攻撃を知らせた。つまり、不意打ちで大惨事になると困るから、イスラエルと米国に対して「できるだけたくさん撃ち落としてください」とメッセージを出したんですよ。

手嶋:イランが標的を軍事施設に限定しただけでなく、事前に内報したことで、即座に第五次中東戦争につながらないようコントロールを利かせた攻撃だと分析できます。

 ただ、現在の第一フェーズでは自制が利いているものの、第二フェーズでは偶発的な戦争にエスカレートする危険を孕んでいると警戒すべきでしょう。

佐藤:今回の注目すべき変化は、イスラエルが守勢に回り、イランのほうに余裕があること。「やられたらやり返す」の原則があっても、これまではイスラエルの背後に米国の存在があり、イランは反撃できなかった。それが今回は精緻なメッセージを発したうえでやり返している。一方のイスラエルは公式の声明を出していない。国際情報戦においては、沈黙している側が劣勢です。

関連キーワード

関連記事

トピックス

衝撃を与えた日本テレビ系列局元幹部の寄付金着服(時事通信フォト)
《24時間テレビ寄付金着服男の公判》「小遣いは月に6〜10万円」夫を庇った“妻の言い分”「発覚後、夫は一睡もできないパニックに…」
NEWSポストセブン
解散を発表したTOKIO
《国民に愛された『TOKIO』解散》現場騒然の「山口達也ブチギレ事件」、長瀬智也「ヤラセだらけの世界」意味深投稿が示唆する“メンバーの本当の関係”
NEWSポストセブン
漫画家の小林よしのり氏
小林よしのり氏、皇位継承問題に提言「皇室存続のためにはただちに皇室典範を改正し、愛子皇太子殿下の誕生を実現しなければならない」
週刊ポスト
教員ら10名ほどが集まって結成された”盗撮愛好家グループ”とは──(写真左:時事通信フォト)
〈機会があってうらやましいです〉教師約10人参加の“児童盗撮愛好家グループ”の“鬼畜なやりとり”、教育委員会は「(容疑者は)普通の先生」「こういった類いの不祥事は事前に認知が難しい」
NEWSポストセブン
警視庁を出る鈴木善貴容疑者=23日午前9時54分(右・Instagramより)
「はいオワター まじオワター」「給料全滅」 フジテレビ鈴木容疑者オンカジ賭博で逮捕、SNSで1000万円超の“借金地獄”を吐露《阿鼻叫喚の“裏アカ”投稿内容》
NEWSポストセブン
解散を発表したTOKIO(HPより)
「TOKIOを舐めるんじゃない!」電撃解散きっかけの国分太一が「どうしても許せなかった」プロとしての“プライド” ミスしたスタッフにもフォロー
NEWSポストセブン
大手芸能事務所の「研音」に移籍した宮野真守
《異例の”VIP待遇”》「マネージャー3名体制」「専用の送迎車」期待を背負い好スタート、新天地の宮野真守は“イケボ売り”から“ビジュアル推し”にシフトか
NEWSポストセブン
「最近、嬉しかったのが女性のファンの方が増えたことです」
渡邊渚さんが明かす初写真集『水平線』海外ロケの舞台裏「タイトルはこれからの未来への希望を込めてつけました」
NEWSポストセブン
4月12日の夜・広島県府中町の水分峡森林公園で殺害された里見誠さん(Xより)
《未成年強盗殺人》殺害された “ポルシェ愛好家の52歳エリート証券マン”と“出頭した18歳女”の接点とは「(事件)当日まで都内にいた」「“重要な約束”があったとしか思えない」
NEWSポストセブン
「父としての自覚」が芽生え始めた小室さん
「よろしかったらお名刺を…!」“1億円新居”ローン返済中の小室圭さん、晩餐会で精力的に振る舞った理由【眞子さんに見せるパパの背中】
NEWSポストセブン
多忙なスケジュールのブラジル公式訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《体育会系の佳子さま》体調優れず予定取り止めも…ブラジル過酷日程を完遂した体力づくり「小中高とフィギュアスケート」「赤坂御用地でジョギング」
NEWSポストセブン
広島県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年6月、広島県。撮影/JMPA)
皇后雅子さま、広島ご訪問で見せたグレーのセットアップ 31年前の装いと共通する「祈りの品格」 
NEWSポストセブン